はつ恋

@mtmynnk

はつ恋

Aちゃんと初めて会ったのは音楽フェスだった。10歳近く年上で、優しくて、しっかりしているのに時々抜けていて、色白で美人で。

そしてAちゃんは男の子が好きだった。


Aちゃんはいつも恋人の愚痴を私に話した。

「貴女は妹みたいで何でも話せるの。いちばんの親友だよ」

私の心には小さな棘が刺さる。棘が増える度に私は作り笑いが上手くなった。

Aちゃんの恋人は浮ついた男らしい。

私はいつも思っていた。

「何でそんな奴が良いの。そんな男より私の方がAちゃんを幸せに出来るのに」

私の中には棘だけではなく、黒く渦巻いた感情も増えた。それが心を満たした頃に気付いた。


これは恋だ。私はAちゃんに恋をしている。

私はAちゃんの妹にも親友にも恋人にもなりたかった。なれるものならなりたかった。Aちゃんの全てに。

気付いてしまったら嘘は吐けない。


そしてAちゃんは男の子が好きだった。

Aちゃんを幸せにするのは私ではなく男の子だ。そいつがどんなに浮気者でも。

耐えられなかった。

だから連絡先を一切変えて、Aちゃんの携帯も着信拒否にした。着信拒否してフェスへ行くのをやめれば良い。私達はフェスを通じて知り合い、携帯で連絡し、遠くに住んでいた。


私のはつ恋は私の手で突然に終わらせた。

まだ私が10代の頃だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

はつ恋 @mtmynnk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ