第7話 2人の未来
涙が止まらない。
女の子は何度も言葉をつまらせて
やっとこの物語を終えた。
「ごめんなさい、ホントなの?って思ってしまう…」
「まあ信じる信じないはお姉さん次第よ。
でも言っとくけどさ、自分が作った話で
泣くなんて事はないよ。私そこまでバカじゃないし」
「そうですよね…」
すごい話だ。
戦国時代のお姫さまと侍。
その2人が愛し合って支えあって
その生まれ変わりが私達なんて…
「それで、お2人が出会った訳だけど」
「ええ」
「お姉さん、はっきり言うけど、今、不幸だよね?」
「えっ」
「守護霊様が言うには、このままだと持たないんだって。
お姉さん自身、もうメンタル限界なんだって。
だから藤次郎さんが彼氏さんを向かわせたんだって
あなた自身ヤバいから助けに来たって」
「ほんとかなぁ?って顔してるよね?
じゃあ、1つ質問するけど
彼氏さん、あなたに触れるのビビってない?」
「え?」
そう言われれば…
としさんは常に私に気を遣う。
手を繋ぐ時も触れていいか?と聞く。
「それね、前世の藤次郎さんなんだって。
愛しいけど触れるのが怖いんだって」
そうだったんだ…
エレベーターで、ベンチで、ホテルで
彼の優しさを思い出す。
「お姉さん、これからも嫌な事が起こるわ。
でも彼氏さんが支えるから負けたらダメよ。
あなたを苦しめる原因が何かは聞かないけどさ
藤次郎が姫を守るって約束したでしょ?
その生まれ変わりの彼氏さんがあなたの傍に来たの」
そうなんだ…
涙が溢れる。
いくらきれいごとを言っても不倫。
幸せを感じつつ常に罪悪感には苛まれてきた。
今日の占いの結果次第で、この関係も
終わらせようかな?と思った。
まだ男女の関係までには至っていない。
今ならまだ引き返せる。
そう思ってたけど…
としさんと生きていこう。
いくら嫌な思いをしても我慢して
子どものためにも頑張ろう。
決心がついた。
「最後に2人の未来。言っておくわ」
あわてて涙を拭きながら顔を上げる。
「あなたが苦しみから解放されて
2人の関係は終わるの。
姫と藤次郎のように。
死ぬとかじゃなくて自然とお別れするんだって」
「私が幸せになったらですか?」
「うん、彼氏さんが役目を終えるってことね」
いつか来るお別れは、私の幸せと引き換え。
皮肉なものだ。別れと幸せが同時にやってくるなんて。
「今まで、いろんな人を
こんなに素敵な話は初めてだったわ。
ほんと感動しちゃった。ありがとうね」
「こちらこそ、なんてお礼を言っていいか?」
「お姉さんの幸せ祈ってるわ」
女の子は何度も手を振って送ってくれた。
また涙が溢れた。
その後、あの子に見てもらいたくて
占いの館へ行ってみたが店は変わっていた。
そして2度と彼女に会うことはできなかった。
その後、ひろちゃんはソウルメイトを検索。
調べ上げたうえで、オレに電話してきた。
「お互いが支えあう必要がなくなった時?
その時がお別れなんだ?」
オレは少し残念そうに訊ねた。
「私、不幸のままでもいいけど」
そう言って笑った。
オレは事の真偽を問う事はしなかった。
世間では不倫だが、オレは彼女に支えられている。
そしてオレの存在が彼女の支えになっている事は確かだから。
終
ソウルメイト 波平 @to4
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