大嫌いで大好きな人。

桜乃あめ

大嫌いで大好きな人。


「ごめん、別れよう」


突然だった、別れを告げられたのは。

私の返事も聞かずに部屋を出てった彼を追うことはしなかった。


はぁ、とため息が漏れる。


(やっとか、、、)


脳裏に浮かんだのはその一言だった。

他に相手がいることはわかってた。

それを気づかないふりして、毎日笑って過ごしてた。


「バカみたい、、、」


そう一言呟くと目頭が熱くなった。

頬を伝って床に落ちる涙がどんどん滲んでいく。


まだ好きだ、まだ好きなんだ。

別れたくなんてなかったんだ。


さっきまで彼が座っていたソファに手を置く。

まだ彼の温もりが残っていて、また涙が溢れる。



ー好きだよー


彼の言葉が、彼の声で、頭の中を反響する。

それが嘘だってわかってた、けど、信じてた。


私になにが足りなかったんだろう。

考えれば考えるほど頬が冷たい。

後悔ばかりが押し寄せてくる。


無駄なのに。


もう彼は他の子と、甘い時間を過ごしているんだろうな。

私に触れてくれた優しい手で、他の子にも触れてるんだろうな。


嫌だ。


心臓がドクンドクンと脈を打つ。

頭に響いて、くらくらする。


あぁもう私は、彼に触れることも、触れてもらうことも、できないんだ。



ーずっと一緒だよー


嘘つき。嘘つき。嘘つき。


どんなに彼を憎んでも、まだこんなにも心が、身体が、彼を求めてる。

今まだこんなに、心が好きだと叫んでる。



会いたい。



でも、



「ばいばい」



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大嫌いで大好きな人。 桜乃あめ @sakura_sa9

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