詩「帰らぬ人」
有原野分
帰らぬ人
市民プールの
波をかき分けて
あの人の声
目立つ
大きな体で
大きな笑い声だ
競馬が好きだった
お酒が好きだった
孫がいたはずで
でも嫁はいなかった
彼は
いつも歩いていた
水の中を
誰にでも隔たりなく
挨拶をしながら
いつだったか
ご飯に行こうと
約束をしたのだけど
それは反故になった
彼は帰らぬ人に
噂話
信じられなくて
実際に
それが事実だと聞いたときにも
信じられなかった
当たり前の
人は死ぬという感覚を
違和感だと思うのなら
きっと僕は余りにもちっぽけだと思う
水際に
太陽が反射して
キラキラと光る
その光景を前に
たまに思い出す
あの笑い声を
流れ去ってからもなお
詩「帰らぬ人」 有原野分 @yujiarihara
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます