聖霊都市第七層の聖貴族 ― 転生者ルーク

第1話 メモリアルセット

 ルークは聖霊都市第七層の聖貴族の生まれであり、彼はアンドロメダ星雲太陽系勢力圏に所属する地球住人の生まれ変わりである。

 といっても魂が輪廻転生をしたわけではない、記憶の欠片であるメモリアルセットを手に入れたのだ。


 ここ聖霊都市では、生を受けた時に選ばれしものが脳にメモリアルセットがプリセットされる。ここではそのプリセット記憶を聖魂と呼んでいた。上層階に生まれたものほど聖魂を宿すものが多い。

 最下層である第七層においては聖魂を宿すものは一握りであったが、ルークは聖魂を宿したのであった。


 何をプリセットされたかによって、プリセット知識が今世の魔法技術と融合されることになる。ただ最下層である第七層に記憶の欠片が降りてくることはめったに無く、最上位から不要なこぼれ落ちた欠片が回ってくる。

 ルークが手に入れたメモリアルセットはそういうものだった。上位層にとって何の価値もないメモリアルセットに分類されたものだった。


ルークが手に入れたメモリアルセットに入っていたスキルは「擬似象形文字言語」というものであった。

 完全象形文字言語であれば古代魔法技術の探索に価値はあるが、擬似の場合はかつて役に立つものはなかったゆえに上位層から敬遠されたのである。擬似象形文字言語には物性物理学、宇宙物理学、エンジニアリングおよび取るに足りないある人生がアーカイブされていた。


ルークは十五歳になってコンフィルマツィオンにて宣誓し晴れて聖貴族の一員として認められた。聖魂を宿しているものはこの時に解放祝福式が行われた。

第七層からの参加はルークただ一人だった。


「さて、第七層の参加者こちらに宣誓を。名を名乗りなさい」

「ルーク・ディフォン・アルバス」

「ほう初めて見聞するスキルセットの聖魂だな」

「これはどういったものなのでしょうか?」


「擬似象形文字文化というものは精神進化過程において存在期間が極めて短くかつ聖魂になるのはさらに確率が低い。そしてこれを得て開封した者はかつてひとりしかいない……

文献では東方の賢者カンザキというもので、我々とは全く異なる魔法体系の機械魔法を構築した者だ」

「それはゴーレムのようなものでしょうか?」

「そう見えるが、根源が違うらしい。まあ今やその機械魔法を理解できる者は今世にはおらん。

お前の聖魂はまさかこの賢者のものでも無いようだか、聖魂の経験値だけは役にたつだろう。なにせ一生分の人生が詰め込まれているからな。

さあこの炎の中心を見つめて」



ルークは黒紫色に揺れている周辺から中心に目を映す。意識が虚ろいでいく。

聖魂のスキルセットが一気に頭から流れ込み、脳内を駆け巡り、全身のニューロンを何度も往復し、また脳内へとフィードバックされた。

彼はこの世に生を受けた瞬間を思い出した。これはまさしく二度目の誕生である。


解放祝福式でルークは驚愕のスキルセットを得たのである。


彼の物語が始まる。




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