ストーリー開始

第1話 見たことのある光景


 俺とアリシアは制服に着替えて学園へ向かう。


「ダイくん、似合ってるかな?」


 アリシアは恥じらいの顔をしながら上目遣いでこちらを見てきた。


「かわいいよ」

「あ、ありがと。えへへ~」


(そりゃあヒロインなんだから可愛いに決まっている)


 小さいころは、可愛いといっても子供を見ている可愛さであった。だけど、今のアリシアはゲームのシナリオが進む時期とかぶさるため、大人になっており、ものすごく可愛く感じた。


「ダイくんもかっこいいよ」

「ありがと」


 その後も二人で和気あいあいと雑談をしていると、あっという間に学園の入り口にたどり着いた。


(すげぇ)


 ゲームでは何度も見てきたけど、実際に学園を目の当たりにすると驚きを隠し切れなかった。


「きれいだね」

「あぁ」


 建物はゴシックリバイバル様式に作られており、日本では見られない建物であった。


(ゲームを作った人はすげえなぁ)


 俺が呆然と立ち尽くしていると、アリシアはキョトンとした表情でこちらを見てきていた。


「あ、ごめん。行こっか」

「うん」


 俺たち二人は学園の中に入って、入り口に向かっているところでルーカスとクレア、そしてもう一人の女性が何かを討論していた。


 それは、クレアが女性とルーカスに怒鳴っているように見える。


(あれって......)


 俺が凝視していると、女性はこのゲームのヒロインであるシャル・マッキルであった。


(これってもしかして!!)


 そう、目の前で行われているのはゲームのプロローグ部分であるところ。


「私、ちょっと話してくる!!」


 アリシアとクレアは身分関係ない友達になっていたことから、とっさにルーカスとクレアの元へと向かっていった。


「ちょ......」


 俺がアリシアに話しかけようとした時にはすでに向かっていた。


(あ~。そういうことだったのか)


 結局は、俺の今までの努力は無駄だったってことなのか......。そう思わざる負えなかった。なんせ、すでに目の前でアリシアにルーカス、クレア、シャルの四人がそろってしまったのだから。


 俺が遠目で見ていると、クレアと少し怒った表情をしながら学園の中へと入っていった。その後、ルーカスとアリシア、シャルが少し話してこちらへ戻ってきた。


「クレア様、怒ってた」

「な、なんで怒ってたの?」


 こんなことを聞いても意味がないことはわかっている。なんせ、俺はこうなった原因を知っているのだから。


「なんか、クレア様よりもシャル様を優先したことに対して怒ったらしい」

「そ、そっか」


(やっぱりね)


「ごめんね」

「え?」

「クレア様とルーカス様が喧嘩しちゃったから」


 俺はアリシアが何に対して誤っているのか理解することが追い付かなかった。

 

 ゲームのシナリオなら、シャルとアリシア、ルーカスはここから仲良くなり、クレアを悪者に仕上げていくはずだったから。


「アリシアはクレア様のことをどう思った?」

「私も好きな人、ましてや婚約者に優先的にしてもらえないのは嫌だからわかるかな」

「......」


 ここでやっと理解した。


(少しずつだけど、ストーリーは変わっていると)


 この時の俺は、クレアが問題を抱えていることを知りもしなかった。



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ギャルゲー世界の寝取りキャラに転生した俺は、押しキャラである悪役令嬢が婚約破棄されるのを阻止するために本気を出す。 煙雨 @dai-612

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