第5話 お互いの企み
俺の問いにアリシアは驚いた表情で見ていた。それもそうだ。国を動かす存在である二人を婚約者に導こうといったのだから。
でも、ゲームのシナリオ通りならこれは確定事項であり、婚約後の方が大切である。
「えっと、ダイくんはそれでいいの?」
「え、何が?」
「だって、クレア様のことが好きなんじゃないの?」
「いや?」
(なんで俺がクレアのことを好きになるんだ?)
まあ、実際に好きだよ。だけど、この気持ちは恋愛感情の好きではなく、アイドルを応援している好きである。
「そ、そうなんだ?」
「うん」
すると、アリシアはホッとした表情をした。
「じゃあ手伝うよ。私もそっちの方がいいし」
「ん? 何がいいんだ?」
「それは私個人の問題だから気にしなくていいよ」
(なにかアリシアにも企みがあるのかな?)
「そ、そう?」
「うん」
「じゃあ、作戦を練ろうか」
俺の言葉にアリシアは頷き、二人で今後のことについて話し始めた。
(これで、クレアが幸せになれる)
☆
ダイくんがクレア様とルーカス様を婚約者にしようと言った時、驚きを隠し切れなかった。
だって、パーティが行われた時に二人で踊っていたことから、好きなのかと思っていた。だけど、それは腑に落ちるところもあった。クレア様はこの国で随一の可愛さを持っていると噂されているし、実際にその噂に引けを取らないほど美しい。
それなのに、ダイくんはクレア様をルーカス様とくっつけようと相談してきたのだ。私にとっては好都合だ。
私はダイくんのことが好き。身分関係なく接してくれるし、いつも甘やかしてくれる。それに、誰に対しても優しく、たまに見せる笑顔が好き。
もし、ダイくんとクレア様を付き合いたいから協力してくれって言われたら、なんて言っていたかわからない。でも、そうではないのなら、喜んで協力する。
(私は絶対にダイくんと結婚する)
それが今の私にとっての目標である。
「それにしてもいつになったら私の気持ちに気づいてくれるのかな?」
そう思いながら、二人でいろいろと計画を練っていった。
☆
アリシアと計画を企んで五年もの月日が経った。
この五年間でクレアとルーカスと出会うことが何度かあったため、俺とアリシアは軽い友達みたいな関係になっていた。
そんな中で、二人は順調に婚約者への道を進んでいっており、つい最近になってやっと公に婚約者として発表された。
(これからだ)
そう。これからが始まりに過ぎない。ゲームのシナリオでもクレアとルーカスは婚約者になっていた。
それを阻止してやっと、俺のやりたいことができるんだ。
そう思いながらも、学園に通い始める当日になった。
※
序章はここまでです。読んでいただき誠にありがとうございました。
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