第15話 夏休みに入るらしい

梅雨が明け、ギラギラとした太陽の照りつけるグラウンド……を横目に、私と愛桜ちゃんは冷房の効いた部室の中で駄弁っていた。因みに今くれちゃんは運動部の助っ人に行っている。

今日は確か……バスケ部だっけ?



「外……暑そーだね……。」


「ええ……。運動部の方々には特に熱中症に気をつけるよう声をかけておりますが、やはり心配は残りますわね。」


「クラスメイトの部活のことまで……愛桜ちゃんは偉いなぁ。流石は最高の委員長。」


「わたくしにとっては当然の仕事ですわ。舞雪さんこそ、声掛けを手伝ってくれたり、紅葉さんが運動部へ助っ人に行く時も余分にタオルや飲み物を用意して下さっているでしょう?」



そんな謙遜するようなことを言って……。

少し顔が赤くなっているのがバレバレだ。あまりにも見慣れた顔だから尚更分かりやすい。

それにしても、顔は同じなのに性格や得意分野がこうも全く違うと、自分にも委員長だった可能性や、運動部に引っ張りだこになる可能性があったのかと考えなくもない。



「まぁ……私はバリバリの委員長でもないし運動が得意な訳でもないからね。気楽に普通の学生やらせてもらってるよ。」


「しかし、その委員長や運動が得意なあの子がいつも頼りにしているのは舞雪さんですわよ。」


「あはは、ありがとう。私も頼りにさせてもらってるよ~。」



そうして談笑していると、部室の扉がバンッと勢いよく開いた。そして同じく勢いよく、体操服のくれちゃんが飛び込んでくる。



「ぅああづぅぅぅぅううああああぁぁぁすずしぃぃぃぃいいい!!!」



何やら叫びながら部室になだれ込んだくれちゃんは、私たちのすぐ近くの椅子にドスンと腰を下ろした。どうやらとってもお疲れのようだ。



「くれちゃん疲れ~!」


「疲れたぁー!!外暑すぎ!!体育館もめっちゃ暑かった!!」


「ふふ、汗だくですわね。紅葉さん、水分補給を忘れずに。熱中症は怖いですわよ。」


「あぁ"~、愛桜ありがとぉぉおお~……この部屋涼しい……。」


「これ、スポーツドリンク買っといたよ。あと、汗で体冷やしすぎるといけないから。ほら、これタオル。まだ使ってないやつ、使っていいよ。」



タオルを首にかけ、手渡したスポーツドリンクをグイッと飲むくれちゃんを見て、愛桜ちゃんとほっこりする。同じ顔だけど、なんか世話の焼ける末っ子を見ている気分だ。



「はぁ~、ねぇ、7月でこれってさぁ、8月もっとヤバいんじゃねーの!?無理過ぎるんだけど!!」


「そうですわね。この調子ですと、恐らく過去最高気温更新ペースかと。」


「マジか~……だったら海行きてぇ~……。」


「海かぁ、いいねぇ。夏休み入ったら一緒に海行きたいね~。」


「……いいですわね!!」



私の何の気なしの言葉に、予想外に食いついてきたのは愛桜ちゃんだった。キラキラと目を輝かせて、珍しく少し前のめりになっている。



「海の近くに別荘がございまして!よろしければ、その……夏休みにお泊まりなど!!」


「おぉ……別荘でお泊まり、楽しそう!」


「自然豊かな立地で、ビーチが近いんですの!穴場のビーチで、例年来る人は少ないんですのよ!」


「じゃあ人混みじゃないんだな!アタシ賛成~!」


「私も賛成!!」



来る夏休みにワクワクしつつ、泊まりでやりたいことをあれもこれもと話し合う。案を書き留め終わった時、おおよそ1日2日では消化できそうにない量の箇条書きがそこにはあった。



「……いっそのこと、2週間程度泊まっていかれませんか?」


「アタシはいいぜ!楽しいがいっぱい長ければ嬉しいしな!!」


「2週間かぁ……まぁ、私も多分大丈夫!」


「では、夏休みのうち2週間はわたくしの別荘へ……。」



愛桜ちゃんが言い終わらないうちに、今度は大人しい音を立てて部室の扉が開いた。見ると、そこには何となく予想していた通りに、四葉先輩と五木先輩がいた。



「あぁ!後輩ちゃん達~!」


「揃っていて良かったな、メグ。」


「ホントだよ~。外で探し回る羽目にならなくて良かった!暑すぎるもん!」


「先輩達、私たちに何かお話ですか?」


「あ、うん!夏休みの間、花壇のお世話を皆でするんだけど、その日程調整をしたくて!基本2人1組で予定を組みたいんだよね~。」



…………あ、同好会の活動、忘れてた……。

先輩達に今の今まで話していた内容を説明し、何とか日程調整が出来ないか掛け合ってみる。しかし、特に四葉先輩のお店の手伝いの兼ね合いで、別荘お泊まり2週間は難しそうだった。



「うぅ~ん、ごめんね……。」


「メグの分もわたしが何とか頑張ってみようか。後輩達にいい思い出を作らせるのも先輩の役目だ。ひとりでも全うして見せよう。」


「ええっ!?学校の花壇全部、いっちゃん先輩がひとりでお世話するのか!?」


「2週間程度ならどうにでもなるだろう。それに、メグも2週間全て店の手伝いという訳でも無いだろうから、完全に一人ではない。」



五木先輩はキメ顔……いや、元々のイケメンキラキラ顔を更に輝かせながら僅かに微笑んだ。これが無意識の表情変化なのであれば相当あざとい。



「気にしないで行ってこい。ただ、2週間も旅先にいるのであれば、夏休みの宿題は持って行った方が良さそうだな。」


「あぁ〜……。それさえ無ければ夏休みって完璧なのになー!」


「忘れてた……また私、最終日ギリギリに焦る人になるところだったよ!」


「それでは、勉強合宿も兼ねてのお泊まり、ということに致しましょうか。」


「うんうん、偉い、偉いよ後輩ちゃん達!!」



こうして話が丸くまとまった私たちは、遂に終業式を迎えた。待ちに待った夏休み、7月後半から8月末までの長期休暇が始まるのであった。

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私とドッペルゲンガーの恋愛事情 J.J. @jjnomousou

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