第5話 あいつが聖女ニャ!

翌日、セシリアの手伝いの為にクレア達と村の診療所へ向かった。


「クレアよく寝れたかニャ?」

「ええ、それはもう……疲れが完全に取れました。あれは魔道具でしょうか?」

「普通の布団だニャ?工房に余ってるし人数分持って帰るといいニャ」

「え?よろしいのでしょうか?でも私どもでは運びきれるか」

「マジックバッグに入れるといいにゃ……マジックバッグも工房に余ってるし持って帰るといいニャ」

 ローテーションでみんなが工房で一度は働く為、村の全員が試作とかいってマジックバックを作ったりしてたし数だけはある。それが数百年とつづいてきたのだ。正直邪魔なのだ。マジックバックを入れる為のマジックバックを作る人も現れ本末転倒だ。


「マジックバックも……ですか?」

「そうにゃ、もし興味あるなら自分で作ってみるといいニャ。工房体験もしていくといいニャ」

「は、はい!この里の叡智を欠片でも触れさせていただけるならば幸いです……」

 そんな大げさな……とは言え作ってしまえばそれが辺り前になるだろう。

 職場体験は大事にゃ。


「セシリアー!手伝いにきたニャ!これ母ちゃんから!漬物だニャ」

「おはようエレナ。わー、セレナさんの漬物最高なんだよねー。ありがとう」

「母ちゃんの漬物は最高ニャ」

「確かに……美味しいですよね。でもあの部屋はの臭いは……」

 クレア、朝に漬物部屋に興味津々で入ったんだけどダメだったみたい……


「ところで何を作ればいいにゃ?」

 セシリアは大概のもの作れるはずだ。

 むしろセシリアが作れても私が作れないものの方が多い。

 あるとすれば素材の分解が面倒くさい万能ポーションくらいかニャ?


「いや、狩猟祭害獣駆除があるでしょ?一応、いらないと思うけどポーション沢山つくっておきたくてね。山の住人からもオーダー入ってきてるし。」

「あーあいつらかニャ。ショボい癖に偉そうだけどまああいつ等の養蜂場のハチミツとかメープルシロップうまいから仕方ないニャ。」

「そう仕方ないでもね~心情的には思うところでちゃうよね」

 あいつらとは、なんか山に住んでる耳の尖った髪が緑色で目が青いハイエルフと色違いのパチモンみたいなやつらだ。

 種族名は知らん。


「わかるニャ、見た目ハイエルフに似てる癖にハイエルフと違って何故か偉そうだから苦手ニャ」

「え、そのお話だとハイエルフは割と現れるということでしょうか?」

「ハイエルフは偶に山でみかけるニャ。若いハイエルフの兄ちゃんがうろうろしてるニャ?セシリアはみたことないニャ?」

「エレナまじ?私みたことないんだけど。」

「山8つ越えた先にいたニャ」

「遠すぎだよ!!行ったことないよ!それにハイエルフ若いかわからんでしょ」

「あ、確かにそうニャ」


 まあ、人間もたまに見かけるしよくある話ニャ。


「じゃあ、この素材とこの素材とあとこれかな、分解して粉末にするニャ。」

「まってましたー!!クレアさんちょっと私達はちょっと下がって離れるよ。」

「え、なにが始まるんですか?」

 セシリアがクレアを連れて少し距離をとる。

 これは単に不純物を判定する為なるべく生き物が近くにいない方がやりやすいからだ。まあ私はどっちでもいいのだけど。


analysis分解】不純物、軽微の発酵状態を確認、イエロー、【disassembly分解】グリーン、【decompose分解】不純物を除去、グリーン【re:solve】判定、オールグリーン


「……出来たニャ」


 机の上にあった色んな素材が瓶の中で粉になる。

 なかなか良い出来じゃないかな。


「いやーエレナは本当に早いね~!私じゃ素材の分解もっと時間かかっちゃう」

「あとはこれ混ぜればよいかニャ?」

「飲むポーションと軟膏ポーションと「セシリアー!ヤマネコにかまれちゃったよー!治して〜!」」

 

 にゃっふっふ、来たニャ……

 左腕にケガをしながらもへらへら笑った農家のおじさんが来た。


「あとはやっとくニャ……」

「あ、おねがいー!狩猟祭害獣駆除も早めた方がいいのかもね~。この噛み跡はベヒーモスかな?骨折2か所に靭帯裂傷に……みるまでもなく腕が千切れそう、あははは!」

「おじさんやっちまったなーあははは!まあぶん殴って肥料にしてやったけどな!わはははは!」


 クレアも一緒にきたシスターもドン引きだ。ちなみに私も流石にドン引きである。ケガしたくないし。でも農家の畑では割とあることである。


「ベヒーモスってあのベヒーモスですか?厄災級の……」

 まあクレア達は気になるよね。都会だとベヒーモス出ないだろうし珍しいのだろう。


「消毒して……ふきふき、【ヒール】、血も流しちゃおっか【ウォーター】はい完了!!」


 ズタボロになった腕は綺麗サッパリ傷跡もなくなった。

 これがセシリアの真の実力である。私だとこんな回復魔法得意じゃないし。


「ありがとセシリア、ポーションもってってなかったらおじさん大変だったよー」

「あはは、今度はポーション持っていってね!そろそろ回復魔法覚えなよ」

「いやー苦手でなあ。あははは、また畑いってくるわ!ありがとな!」


 農家のおじさんは嵐の様に去っていった。

 おじさんが来て2分程度の出来事である。


「クレア、みたかニャ?セシリアは回復魔法が得意ニャ。」

「ええ……聖女様に匹敵、いえもっと早いかもしれません……」

「私だともっとかかっちゃうけど、セシリアは一瞬ニャ。」

 私は5秒くらいかニャ?回復魔法あんまり使ったことないけど


 にゃっふっふ、これでセシリアが聖女って話にもっていけるニャ


「クレア様……!!アリアが!アリアが!」


 なにごとニャ〜?

 

 重傷者がクレアの従者たちと村の者によって運ばれてきた。

 あ!養鶏場のおじさん!?

 養鶏場のおじさんがなぜか申し訳なさそうにペコリとクレアに謝る。


「クレアさん、申し訳ねえだ!俺の監督責任だ!応急処置はしたんだが……」


 おじさんが言うにはクレアと一緒にきた騎士アリアが養鶏場の見学をしていたらしい。

 家畜化しているとは言え、コカトリスは獰猛だ。

 舐めてちかづくと腕をもがれる、というのはよく聞く話だ。


 どうやら「私は克服した」といいながらコカトリスにマウントをとりながら近づいたらしい。そしたらクチバシでついばまれ、腕が無くなっちゃって、キックを受けて内臓がずたずただ。ズタボロになった千切れた腕も一応回収はされている。


 一刻を争う容体ニャ!


「これだけ重傷だと腕の再建に時間かかっちゃうかも、千切れてるしね、エレナ……お願い」


 セシリアの言う通り、元に治すことは可能だが千切れてしまうと繋がっていた魔素のリンクも途切れ、回復魔法では時間がかかる。となれば身体的にも精神的にも患者の苦痛が長引く。

 即死でもおかしくない状況だが養鶏場のおじさんが遅い掛かろうとしたコカトリスにデバフをかけ間に合わず襲われたが、おじさん回復魔法が得意じゃないなりに瞬時に処置をしたそうだ。それで運よく即死にならずこれはおじさんナイス処置だニャ。


「おじさんナイスにゃ!セシリアやるニャ」

 これはなりふり構ってられないニャ!

 セシリアに周囲を滅菌などサポートしてもらいながら施術を開始する。


「俺まだ24なんだけどな……」


 腕をまずは物理的にくっつけるニャ!

 軟膏ポーションを接着材代りにして添える。

 軟膏ポーションには魔法を術式化して魔素に還元し結晶化した粉末を使ってるニャ。そこで体内の細胞内にある魔素が反応して治ろうとするニャ。一応、もうつながってきているはずニャ。

 あとは【analysis分解】膵臓、大腸、小腸、肝臓、右腕に重篤な欠損、及び裂傷を確認、レッド、【proteolysis分解】ミトコンドリア内の魔素を読み取りtrueを形成、グリーン、【decompose分解】不純物を除去した上でtrueを再構成、グリーン


「準備おっけーニャ……【リストレーション】」

 魔素でタンパク質や骨を再構成している為、青く光り集束する。


【re:solve《分解》】判定、オールグリーン……治ったニャ。


「10秒くらいかかっちゃったニャ。起きた時に痛みがなければいいニャ……」

「いやーまじでエレナの回復魔法ほんと意味わからん。けどありがと!私、ちょっとテンパってたから助かった」

「本当にありがとうございます!アリアが、アリアが無事で、よかった……グス」

 クレアとシスターや従者にお礼をもらった。

 まあ、感謝されるのは悪い気はしないニャ


 アリアは診療所であずかることになった。

 今日はみんなショックだったのもあってか集会所で反省会?を開くらしい

 これは母ちゃんや他の村の大人が集まって村で危険なところとかないかをしっかり整理してクレア達に説明するらしい。まあ私達は疲れてるだろうからって免除ニャ。

 まあ、安全だと思ってた村の中が意外にも危険なんだよね。

 養鶏場や畑ではよくあることなのだが、まさかこんな重傷者が出るものだと思わなかった、というのもあって意識改革らしい。


「いやー、お母さんから聞いてたから知ってるんだけど、これでエレナの聖女は決まっちゃったな~。私にわざわざクレアさんの前で治療させたのにね~」

「はっ!しまったニャ……!!バレてるにゃ!?……ん?セシリア、本当にあの時アリアを治せなかったニャ?」

「…………ん、ん~治せるけどあそこまで早くは治せなかったと思うなー、私テンパってたし。」


 なんか少し目を逸してるから怪しいにゃ。


「でも村から離れたくないニャ……」

「それは私も同じ」


 あ、そうだったニャ……私、自分のことばっかり考えてたにゃ


「ごめんニャ……」

「いいって!でもさ……聖女なんで来てくださいって言われても別に拒否してもいいんじゃないの?それに来て欲しい理由とかも話してくれないのに言っちゃ悪いけどズルいよねクレアさん達」

「あ、確かにニャ……まあ、そうニャ……でも」


 何か困っていることがあるから来たのではないのだろうか?

 考えても話は進まない


 明日、クレア達と話をしようと思うニャ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

猫耳少女のドヤ顔聖女譚 ノエル・フォン・シュテュルプナーゲル @noelvonstlpngl

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ