第4話 いいこと思いついたニャ
人間が来て最初はビビっていたが別に悪いやつはいないってことで村でもてなすことにした。
そもそもこんなド辺境で暇な村だ。旅人が来るってこと自体がビッグイベント村なのだ。
みんなは表に出さないよう取り繕っているつもりだが皆はテンション爆上がりだ。
入口の結界から案内した。
まず村を囲む城郭とそれに施した結界の術式についてを母ちゃんが説明していた。母ちゃんドヤ顔ニャ。
「来た時から思ってたんですけど城郭があって結界があって井戸ではなく水の魔道具を各家に完備してて竈もあるけど魔導コンロや食材を冷やし保存する魔道具も完備、道も石の様な何かで舗装されて家も石と鉄骨で出来ていて窓は済み切った硝子で出来てるんでしたっけ?夜は明るく優しい光を燈す魔道具で屋内を照らす……。そんな獣人族の村ってあるんですね?人間の村どころか都でも多分ないですよ」
クレアはなんか無表情で早口で感想いってたニャ。すごいニャ!
あとは魔道具工房だったり鍛冶屋、診療所、畑、養猪場、養鶏場、解体場、あとは宴会場兼集会所。
養鶏場ではなぜか騎士が剣を抜き出して大騒ぎになった。
「私は昔こいつに〜こいつに〜」と興奮して過呼吸になっていたから生活魔法で鎮静して落ち着いてもらった。昔、養鶏場でなにかあったのかもしれない。
でも
「コカトリスはニワトリに分類されるのでしょうか……?それにここは古代文明を受け継ぐ里なのでしょうか……そういえばエレナ様とセレナ殿、いえセレナ様、お二人とも伝説のハイエルフの末裔でしたね……」
とかクレアが言ってたにゃ。母ちゃんがまたドヤ顔する
それに伝説は盛りすぎ。ハイエルフたまにみるし。
聖女にしたいからってそんなにヨイショしなくてもな……とは思った。人間の街はそんなに毒素分解しないといけないくらいゴミ捨て場が多いのかもしれない。
それで集会所に案内したニャ!
張りきって集会所のキッチンに料理が好きな村人が集まって夕飯を作っている。
鍛冶や工房の人は包丁や皿をここぞばかり運んで人間をチラ見して出ていく。さも気にしてませんなフリしてチラみしていく。クレアや随伴している騎士、シスターが美人なのでチラっと見ていく。
養鶏場のおじさんは鶏卵だったり同じところで育てている猪を撲殺して解体して持ってきた。腸を小麦粉でもむの手伝うよ~とか言って居座る気であわよくば夕飯をご一緒する気だ。養鶏場のおじさんはクレアに随伴しているシスターが好みらしい。こいつも気持ち悪いのだがいつも猪や卵をもらっているし、今回も提供してもらったので無碍には出来ない。
農家のせがれは野菜を持ってきたがそこまで図々しくなれない性格なのかクレアをチラチラして手伝うわけでもなくうろうろし、集会所を出たり入ったり私をたまにチラ見する。ほんとうに気持ち悪いニャ……
隣の家のおじさんはセレナさんいるか~?とか言って何かにつけて母ちゃんに近寄っていく。隣の家のおじさんは母ちゃん推しで母ちゃんしか見てない。いつも通り参謀気どりで平常運転だった。ちなみにいまだに独身ニャ。誰も気にしない
とにかく村の人が入れ替わり立ち代わり何かと用事を作って集会所に来る。
それほどビッグイベントなのだ。
私は家のトン汁と母ちゃんの漬物持ってきたニャ。せっかくだし食べて欲しいニャ。
それにこの集会所で作ってるのは大体が母ちゃんの考案したレシピである。
猪肉にパンを粉状にしたものをまぶして揚げたやつとか、トマトと香草と鶏肉で炒めた米を卵でくるんだものや。あとは豚の腸や肉を味噌で煮込んだもの焼いたもの、豚汁に合わせて普通に白米とか。
あとはなんかいっぱいニャ。
絶対これ食いきれないだろってくらいの量とバリエーションニャ、まあ私達もいっぱい食べるし大丈夫ニャ。
母ちゃんが「田舎の実家っすか?」とか言っていたが母ちゃんの実家は今住んでる家だしそんなに飯出さないだろ。と白い目を向けておいた。ちなみに母ちゃん偶に、稀に変な言葉遣いになって語尾がおかしくなる。
その時、シスターがぼそっとクレアに話す。
「クレア様、肉がございます……!よろしいのでしょうか?」
「いただいたものを食べないのは教義に反します」
「やった……」「肉が食える……」「付いてきてよかった」
私達は耳がいいので丸聞こえにゃ。
肉は宗教的にマズかったかニャ……聖女になったら肉禁止とかないよニャ……?
ひとまず私もお腹すいたニャ!
両手を合わせて
「いただきますニャー……!ってあれ……?」
クレア達が目を閉じたまま手を付けない。
もしかして人間と獣人じゃ好みが違うにゃ?
一応、もてなす側はもてなされた側が手をつけないと失礼かも~くらいの価値観がゆるゆるの感覚であるし私達は食べられない。
「ブツブツブツブツ……お導きを恵を我らに……それではみなさん女神ノエル様に感謝を」
「「「「女神ノエル様に感謝を!!」」」」
もし聖女になったらこれやらされるのかニャ……絶対嫌ニャ。女神ノエルって誰ニャって感じニャ。
クレアはどれから食べるのか気にしていたようだが好きに食えと言ったら好きに食べ始めた。どうやらオムライスが気にいった様子。
シスターは肉をとにかく食べている。騎士も肉を食べている。私のトン汁は好評みたいで嬉しいニャ。
腸を最初はしかめっ面で観ていたのだがそれも気に入ったようす。
米との相性に気づいたようだが米が無くなり絶望していたところ、お替りをそれとなく村の子がよそってくれたらぱあ~っと笑顔になった。
どうやら自分から欲をかいた行動は教義に反するらしい。だから自分からおかわりは出来ないが戴いたものなら寄付のような感じでOKらしい。
聖女になったら面倒くさそうニャ……
いっぱい食べな!と村のみんなに出されクレア含めた5名が妊婦の様なお腹になったところで母ちゃんがみんなを止めた。
「実家のばあちゃんっすか……」とか言ってたが母ちゃんたまに意味わかんにゃいこというニャ。
ただクレア達も甘味は別腹みたいでデザートのカステラに生クリーム乗せたやつは食べていた。大豆を絞った豆乳で作った生クリームだけどね。
牛は食べてしまって牛乳を搾れず豆乳しかない……牛の生クリームが食べたいニャ
「こんなおいしい料理やお菓子他の国でも食べたことない!」
クレアはどうやら見た目通り私と歳が近いみたいで興奮して歳相応の言葉遣いが出たようだ。少しホッとした。
満足してくれたようで良かった。
私の歳?私は16歳にゃ。
「あー!!終わっちゃった!?なにこれ沢山ある!ずるーい!」
「こらセシリア!お客さんの前だよ!」
村の診療所担当のセシリアにゃ。
私の幼馴染で回復魔法が得意な子だ。なんかプラチナピンク?みたいな髪腰まで伸ばしている。なんか背が高い、なんか背が高い。160cmはある。くそ、羨ましいにゃ。
私?私の背の高さは内緒にゃ。髪の長さは背の高いセシリアと比べるのもアレだけどお尻から太ももくらいまで伸ばしてる。母ちゃんが女は髪大事にしろって言ってたからだけど正直邪魔で切りたい。
ちなみにセシリアをしかったのはセシリアの母親だ。ちゃっかりおもてなし調理から参加している。
「そういえばセシリアは回復魔法が私より得意ニャ、セシリアが聖女ってこともワンチャンありえるニャ。毒素分解も出来るニャ」
「エレナ~まじでいってんの?回復魔法は得意だけど他はあんまりだよ。魔法も魔力操作も魔素操作も魔力もエレナが一番じゃん」
「私は生活魔法が得意なだけニャ」
「まだアレを生活魔法とか言ってんの……傷も治せる解毒も対消滅浄化もできるレベルの
「そうだぞセシリアの言う通りだ!それにセレナさん!工房の手伝いたまにはエレナを回してくれよ」
「なに言ってたんだ鍛冶場のインゴット分解してもらうの先だぞ」
「いーや!エレナには診療所で薬作ったり重傷者出たら緊急で回して欲しい!」
わ、私の為に争わないでニャ!!
「わ、私は狩りでいいニャ……」
「そうだね、うちのエレナは狩りが得意だからさー」
生活魔法が得意になると生活に必要な施設から求人が殺到する。やはり生活魔法は村での就活に有利だが人が少ないと取り合いの争いになってしまう。私はそれが嫌だった。ひとどおり手伝っていたらそうなってしまい困って母ちゃんに相談したら母ちゃんの手伝いで狩り担当という事になった。実際は村のみんな全員がローテーションでみんな色んなことをして色んなことが出来るのだけど、得意不得意があって固定で仕事を担当する人がいたりもする。
「たまには畑とか養鶏場の土の分解お願いできねえか?」
「いいニャ」
これは卵とか鶏肉もらってるからこれは仕方がない。
「むうずるい、エレナおねがいーい薬作るの手伝って~」
「む、むむむむセシリア抱き着くニャ、暑苦しいニャ…………っは!まてニャ」
私はぴーんと閃いた。
セシリアだってやれば毒素の分解はできるニャ。
言ってしまえば村のみんなならだれでも出来るにゃ。
母ちゃんがみんなに教えたのだから。
単に生活魔法が大の大得意なのが私というだけニャ。
要は聖女は瘴気といわれる毒素の分解が出来て、あとは想像だけど回復とか解毒とかが出来ればいいと思うニャ。
「わかったにゃセシリア、明日手伝うニャ。」
「んー大好きーエレナ―大好きー」
クレアがこちらをじっとみている、ここで私が目を合わせる。
「あ、あのエレナ様、診療所の治療や薬の調合風景を見学させていただいてもよろしいでしょうか?」
かかったニャ!!
セシリアを聖女にしたて上げる作戦をするニャ。
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