異形との邂逅~少年たちの叫び~

松本メイス

プロローグ

「ハァッ…。ハァッ…。」

少年は息を切らしながら顎に滴る汗をぬぐう。

『…11秒99。まぁいつもよりかは良い方だな。』

頭の中で声が響く。

「ハァッ…ハァッ…そう…だな…。」

少年は頭の中で響いた声にそう答えると荷物を置いている場所に戻り水筒の中の水を呷った。

「おーい正俊!」

声がした方を振り向くと一人の少女が窓の向こうから顔をのぞかせてきた。

「なんだよ未空。」

怪訝そうな顔で少年は少女にそう返した。

「練習もいいけど、そろそろ時間じゃないの?」

「時間?何の話だ?」

そのやり取りを聞いて頭の中で呆れたようなため息とともに声がまた響く。

『はぁ…今日は楓恋の誕生日だろ?』

楓恋というのは少年の妹の名前である。

「あ、やっべ…。」

そういうと大急ぎで着替えと準備を済ませ急いで学校を出た。

『全く…だから練習はやめに終わらせろって言ったんだ。』

また頭の中で声が響いた。少年はまた息を切らしながら慣れたように声を返す。

「ハァッ…ハァッ…悪かったって…途中でケーキも買ってくけど…ハァッ…お前どうする?」

『俺は要らないからさっさとしろ』

「へいへい…ハァッ…。」

その時…少年の頭上を得体の知れないものが通った。

『…おい。今のなんだ…?』

「あ?ハァッ…ハァッ…何…?ハァッ…ハァッ…。」

『鳥みたいだったけど…見た目がなんと言うか…ものすごくグロテスクだった。』

「…いやいやいや。まさか怪物かなんかだとでも言いたいのか?あり得ないって…。」

少年は笑いながら走ってケーキ屋へ向かった。

妹の誕生日ケーキを買い終えるとまた急いで帰路に就いた。

「ただいまー。」

少年はそう言って玄関のドアをあけた。

しかし少年はドアを開けた途端吐き気がした。

家の中からとてもひどい悪臭がしたからだ。

「オェッ…なんだよ、この匂い…!?」

『これ…どこかで嗅いだことが…あ…もしかして、血の匂い…!?』

「なん…だって…!?」

そう言うと少年は鼻をつまみながら中に入っていく。

リビングに入った少年の目に飛び込んできたのは…

両親と妹の、無惨な死体だった。

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