えんタメッ! ヒーローShoW! 

カール

第1話 ヒーロー見参!

「いや、誰か助けて!!」

「ゲヘヘヘ! 無駄だ! 誰も助けになんてこねぇよ!」


 髪の長い美しい女性が、角が生え真っ黒なスーツを着た怪人のような男に捕まっている。周囲の建物は倒壊し、倒れている人々も多くいる。同じ角が生えた別の怪人が周囲の建物更に怖し道路に駐車している車を横転させ高笑いをしている。


「来るわ! ヒーローが絶対助けにくるわ!」

「はッ! 軟弱なヒーローなんぞ来るわけがない!」

「そこまでだ!!!」


 声のした方へ視線を向けると、倒壊したビルの屋上に3人組の人影が立っていた。


「ぬ! 何奴!!」

「とぉー!!!」


 ビルの屋上から跳躍する3人の人影。それが目の前に着地する。その瞬間に土煙いが舞いいまだその人影の正体が見えない。


「ええい! やれお前たち!!」

「おおー!!」


 先ほどまで街を破壊していた怪人たち2名がやってきた乱入者2名に向けて走り始める。随分と長い土煙の中へ飛び込んだ仲間の悲鳴が聞こえ始め次の瞬間には先ほど飛び込んでいった仲間二人が吹き飛んで壁に激突する。


「な、なんだと!」

「その女性を放せ!!」

「馬鹿め! 人質を手放すヴィランがどこにいる!!」


 ようやく土煙が晴れてそのヒーローの姿が見える。まったく統一されていない衣装デザイン。リーダーと思われる赤い衣装のヒーローは銃を持っているが、その横のヒーローは刀を、さらに反対側のヒーローは鞭を持っていた。しかも全員デザインはバラバラだ。


「え、え? いや統一感!? お前ら本当にプロか? そういう売りなのか!?」

「だまれぇ! そんなダメ出しは不要! いくぞ!!」

「いや、人質いるから! 全員で突っ込むな!!」

「問答無用!!! とぉ!!」


 赤い衣装を着たヒーローが大きくジャンプする。それを見上げた瞬間、別の方向から鋭い鞭の攻撃が襲ってきた。


「キャア!」

「おい、大丈夫か! お前ら馬鹿か! 人質いるのに攻撃するなって。っていうか今の赤いやつが飛んだ意味何!? まさか視線をそらせるための作戦じゃないだろうな!?」

「黙れ悪党め! この高度な戦略が理解できないとはな。それにお前が人質を取らなければその人は傷つかなかったんだぞ」

「ええ? ――いやもうだめだ。おい、


 人質を取っていた怪人がそういうと先ほど吹き飛ばされた怪人が起き上がり始めた。首を回し、腕を動かしストレッチしている。


「な、なんだと! あの攻撃を喰らって起き上がれるなんて!!」

「はぁ。一応お前さんの事務所から華を持たせてやってほしいと言われてたけどこれだめだろ。もう一度学園で勉強しなおせ」

「く、くるなぁ!!」


 起き上がった怪人が一歩踏み出す。その瞬間に地面が陥没し怪人の姿が消えた。それと同じタイミングで助けにきたヒーローたちが宙に舞う。腕や足があり得ない方向に曲がりまるで車に跳ねられたかのような重傷だ。


「クラッシュキャンサー!!」

 

 岩でできた大きなハサミが空中に浮かんでいたヒーローたちの人体を引き裂き周囲に血がまき散らされた瞬間その3人組のヒーローが消えた。するとその一帯に大きく聞こえるように機械音が木霊する。


『勝者:ヴィランチーム 昭和の怪人たち』


「すまんかったな。大丈夫か?」

「はい。近くで見れて楽しかったです! ただあのヒーローさんにはもう少し頑張ってほしかったですけど……」


 先ほどまで首を掴んでいた女性をリーダーだった怪人は手を放し頭を下げて謝罪した。すると人質だった女性が手を振って頭を下げた怪人と話している。


「おーい。十郎さん。今日は終わりかい」

「ああ。配給された”神隠し”はもう使っちまったしな。幸いって言っていいのかあれだが、相手のヒーローが訳わかんない感じだったせいかそれなりに数字は高かったみたいだぜ」

「おおそうか。今回は楽なもんだったな」


 そういって先ほどヒーローと戦った仲間の怪人が集まって話始めた。すると先ほどまで倒れていた人々も起き上がり背筋を伸ばしたりスマホで何か操作し始めている。


「あのヒーローしょぼすぎでしょ。どこの事務所かな」

「ね。私もうツイッター上げちゃったよ、マジ受ける」


 何も事情が知らない人がみたら異常な光景だろう。先ほどまで街を破壊していた怪人たちが談笑し、襲われた人々が楽しそうに雑談し、人質だった女性がまるでヒーローのように周囲の人々から質問攻めにあっている。


「人質どうだった? 苦しかったりする?」

「ううん! 全然だよ。痛みも何もなかったしもう夢中で叫んじゃった」

「いいな。次は私も人質役やってみたいな。でもエキストラ参加できたからよかった」


 そうして皆がそれぞれ談笑していると周囲の破壊された建物や道路、車などが青白く光り始める。


「あーそろそろ空間事象の巻き戻しが発生するんで気を付けてください!」

「あ、わかりました。これも生で見るの初めてだから楽しみ!」

「ほんとね! 最初見た時は映画みたいで本当に驚いちゃったもん」


 周囲の青白い光の輝きが増し眩い光になると壊れた建物が自然と起き上がり吹き飛んだ瓦礫などがまるで逆再生のように戻り始めた。同じように割れたガラスや道路、車などすべてが元々あった形に戻り始めたった数分で元も綺麗な街の一角へと変貌する。

 そして元の形へ戻ると青白い光が徐々に薄くなり次第に消え完全な何もない、何も起きていない街並みへと戻った。


「はい。以上で今回のShoWは終了です。お付き合いいただきありがとうございました」


 3人の怪人がそうやって頭を下げると周囲の人々から拍手が生まれた。





 そう。これはShoWと呼ばれる見世物、新しいエンタメだ。

 





ーーーーー

えー主人公が登場しないまま完結扱いにしており大変申し訳ございません。

紹介文にも書いているのですが、1話書いて満足してしまい、1年近く寝かせていた作品です。供養のつもりで投稿しました。

とはいえ改めて自分で読んでみると面白いのでは? と感じたので、もしかしたら続きを書くかもしれません。

その時はよろしくお願いします。

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えんタメッ! ヒーローShoW!  カール @calcal17

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