最終回 付き合ってが口癖の甘神さんと俺は付き合ってない。


 新幹線のホームに来ると、俺たちは並んで新幹線を待った。


「甘神、色々とごめんな」

「なんであなたが謝るのかしら」

「俺は赤の他人なのに。2人のことで偉そうにしゃしゃり出たから……後から考えたら余計なことだったなって」

「……あなたがいなかったから、今頃私は両親と同じように人の道を踏み外していたわ。怒りであの子の首を絞めていたかもしれない。でもあなたがいたから私は平静を保つことができた。だから、ありがとう天野くん」


 あぁ、いつもの甘神だ。

 いや、いつも以上にスッキリしているような。


「し、新幹線なかなか来ないな」

「私はこのまま来なくてもいいと思っているのだけど……」

「いやいや新幹線は来るだろ。てか来ないと困るだろ」

「……空気を読みなさい。おばか」


 なんてことを言っていたら新幹線が来た。

 やっと都会から出ていける。


 席に腰掛けた途端、心の荷が一気に落ちた感覚があった。


「あぁ……」


 安堵して、うとうとしていたその時、頬に柔らかい何かが……っ。

 横目で見たら甘神の顔が真横にあって、甘神の柔らかい唇が俺の頬に……。


「な、何してんだよ甘神!」

「誰も見てないし、いいじゃない」

「お、おおお、お前な!」

「天野くん」

「な、なんだよ改まって」

「来年もよろしくね?」


 はぁ。とため息をつく暇ももなく、また来年も甘神知神の言いなりなのだと悟った。

 こんな距離感でも俺と甘神は付き合ってない。


「天野くん、付き合ってくれるかしら?」

「ああ。付き合ってやる。いつまでも」


——END——

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高嶺の花は俺に"付き合って"欲しいらしい。 星野星野@電撃文庫より2月7日新作発売! @seiyahoshino

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