とある蒐集家のコレクション
十余一
とある蒐集家のコレクション
僕のコレクションを初めて見る人の反応はだいたい決まっている。「どうしてそんな物を?」と頭上に疑問符を浮かべ困惑するのだ。長年交流のある友人すら眉を下げ苦笑するのだから、およそ一般的ではないということは流石に推察できる。
割れた床タイルの破片、穴だらけの障子紙、底が斜めにすり減った靴、丸香炉に積もった線香の灰、緩んで壊れた蝶番、古びた釘、エトセトラエトセトラ。
しかし、何も無秩序に
こういった物を集めるのは、まるで、抜け落ちた猫の
例えば、この古びた釘は
いかにもという風合いの、寂びた見た目だ。長さは
とある地方鉄道で使われていた物だが、その路線は一度廃線となるも、地元民の要望により復活を遂げたのだ。足が必要だという切実な事情もあったろうが、親愛の情を感じずにはいられない。
この犬釘は枕木と鋼のレールを繋ぎ、その上を走る列車を支え続けた。そこには、暖かい陽だまりのような日常も、静かに降り注ぐ哀愁も、爽やかに吹き抜ける友情も、燃え上がる炎のような
肌に深く刻まれた
僕は物語性を何よりも重んじる。それは物語を愛する読書家と何ら変わりはしないだろう。ただ、読む対象が本か、そうではないかの違いにすぎない。
僕のコレクションの素晴らしさを理解していただけただろうか。
とある蒐集家のコレクション 十余一 @0hm1t0y01
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