カーテンにシャーされた話

梓馬みやこ

新しい日本語、爆誕

カーテンにシャーされた話


頭悪そうなタイトルだが聞いてほしい。

父は静かに動作する人だった。物静かなのではなく人が寝ているときは足音を消して歩くタイプだ。

方や母はおかまいなしに歩くタイプ。


ある日のことだった。


夕方。一階で入力をしていた私は集中していた。

突如、シャー!というすさまじい音に顔を上げると母が今までないくらいの勢いでカーテンを引いていた。


「シャーされた! カーテンにシャーされた!」


突然。

前職場では何を勘違いされたのか冷静、クールで通りかけていた私はそんな迷言を発することになった。


母は冗談の通じる人ではないので一瞬何を言われているのかわからない顔をした。


「威嚇された!!」

「?」


ますます通じない。わかっている。私の方は。

なぜそんな発想が飛び出てきたのかは全くわからない話だが……


「猫に威嚇されるみたいにシャーされた!」


そうなのである。

その「シャー!」は猫の「シャー!」を彷彿させたのである。

猫を飼っている人ならあるいは、なんとなくわかるだろうとは思う。

我が家は成猫9匹同時飼いしていた経験があるから通じるとは思っていた。


通じなかった。


「すごく、荒々しかったから猫に威嚇されたような感じになった」


仕方なしに私は説明っぽいセリフを放つ羽目になっていた。

突発的な脳内ストリーム。


家族といえど、通じないときは通じないのである。

特に冗談のつもりもないのだが。

冷静にフォローしたことでテンションが戻った私は再び入力作業に入る。


新しい言葉をひとつ、得て。

猫が好きな人は、カーテンを荒々しくシャーされたらぜひ使ってみてほしい。



※私の家の一階の廊下は、ハイタイプの窓4枚(×2)というとんでもなく長い仕様である。

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カーテンにシャーされた話 梓馬みやこ @miyako_azuma

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