このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(143文字)
うーむ、考えさせられます。母親が亡くなって実家に戻った主人公。歳をとり自分一人で実家で生活を始めると、疎遠な姉とは違い、姪との触れ合いが始まる。台風による避難警報で、姪の家に一時的に身を寄せる叔母との、緩やかなお話です。自分の老後を考えるキッカケになれば。真面目な良いお話です。
これは母が亡くなり、一人になった「私」と姉の娘である沙英との物語。共に生活をしていたわけでもない、叔母と姪という距離感。それが広がるでもなく縮まるでもないと思っていた私に起こった「何か」を機に二人の距離は、心は変化していくことになります。主人公の心情に頷きつつ、彼女たちが作り上げていく会話と時間に、読み終えた後に起こる柔らかな気持ち。こちらを是非、皆様にも味わっていただきたく思います。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(51文字)
この作者の筆力ならでは、といった本作。主人公である『私』が体験する二つの出来事を、お題である『いいわけ』とタイトルの『一過』へ、見事に落とし込んでいる。本作はその内容の平坦さが、余計に文章力を感じさせるのも特徴的で、無駄がなく、リズムが整っているからこそ、淀みない読書体験が得られるのだ。まさに『一過』である。