【KAC20237】私はいいわけをする

桃もちみいか(天音葵葉)

君の想いを知らないふり。

 ひざしのあたたかな

 春がきて

 君がわたしの

 テリトリーにやってきた


 ここはわたしの職場だぞ


 遠く離れた席から

 こらこら

 じっとこちらを見つめるんじゃない


 わたしは

 わたしを見つめる

 君の視線に気づいてる


 でもわたし

 君の想いを知らないふり


 けっこう

 年の差ありだもの


 それに

 わたしと君は

 今日からは

 教師と生徒の間柄なんだもの


 ずっといっしょに

 そばですごしてきた


 幼馴染みだからって

 親しいからって

 学校では

 知らないふりをしてね?


 お願い

 必要以上に近づかないでね


 世間体ってもんがあんのよ

 大人の世界には


 大人はいいわけばかりだと

 君は言った


 だって仕方ないじゃない

 わたしは

 大人なんだもの


 君が子供なのが悪いんだ


 年下すぎるのが悪いんだ


 ついでにいえば

 このごろ妙に

 男前になってきたのが癪にさわるの


 タイミングが悪すぎでしょうが


 もっと大人になってから

 告げてほしいんだよね


 可愛い弟みたいな君と

 頼りになる姉みたいな

 幼馴染みで良いじゃない?


 いっしょに仲良く遊んで

 いっしょに寄り添ってお昼寝して

 いっしょに楽しくお出掛けしたよね


 いっぱい思い出あるけれど


 君とわたしは

 離れてなくっちゃ


 教師と生徒だもの

 距離をうーんととらなくちゃ


 背なんかとっくのとうに越されたし

 かけっこだってきっともう敵わない


 だからって縮まらないものがある

 年の差は

 いくら経っても

 いくら頑張っても

 縮まらない


 そうやって

 抱きしめてこないで


 いきなり

 大人びた顔して見つめてこないで


 君はわたしが好き

 わたしは君が好き

 だけど

 だけど


 そうだよ、

 大人はいいわけばかりだよ


 そうして

 本音も好きも飲み込んで

 笑うんだ


 そうして

 本心も大好きも隠して

 微笑むの


 君は遠くにいればいい

 わたしの手に届かないところ


 そのうち

 同級生とかのさ

 可愛い彼女を

 連れてさ


 素知らぬ顔で

 紹介してくれたらいいじゃない


 君はわたしを

 好きだと言わないで


 わたしは君を

 好きだと言わないから


 君の想いをしらないふり

 わたしはわたしの想いをしらないふり

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