26 魔女との思い出の話 8
◇ ご挨拶と連続シリーズの趣旨説明 ◇
つくもせんぺいです。
出会っていただきありがとうございます!
さて、魔女との思い出の話5から連続したテーマでお送りしている、魔女先生こと、
村田喜代子 先生
の、ゼミで長く扱った題材のお話。
参考の呪文書及び記録は、
先生の著書「縦横無尽の文章レッスン」・大学時代の教材・つくものあやふやな記憶(苦笑)です◎
引き続き【2000年間で最大の発明は何か】をお送りいたします。
では参りましょう。
◇ 弟子が考える発明と理屈とは 変わり種編 ◇
前回は不可視編と題し、「音楽」と「時計」をご紹介しました。
時計は自分が発表したもので、魔女先生にもまぁまぁ公表でしたが、長い論と言われまして……(悲) 今回はまず、
「キリッと短くて鮮やかなもの」
と、評された2つをご紹介します。
⑴ リップクリーム
私があげるもの。それはリップクリームである。
恋人にするキス。夫にするキス。愛する我が子にするキス。
唇は相手に想いを伝える重要な器官である。
その唇が、ぱりぱりのガサガサ、乾燥しひび割れ、血色のない青ざめたものならばどうだろう。
そんな熱も伝えられぬ唇で、繊細で優しく、やわらかな気持を伝えるなど不可能だ。
人間は共生しなければ生きられない。一人では生きてゆけない生きものだ。生きてゆくためには、愛を伝え合う相手が、何よりも大切なのだ。
資本主義、物質社会のなか、愛情よりも仕事を取る、という人が増えてきている。しかし、仕事が一生の支えになると思ったら大間違いだ。
その人生を終える間際、人が考えるのは仕事ではなく愛する人である。微笑みながら最高の充実感を得るのは、愛する夫、子ども、そして孫と連綿と繋がる愛の連鎖を見たときである。
愛はいつの時代においても最優先されるべきものなのではないだろうか。
はい! 今回の弟子の考える最初の発明は「リップクリーム」です。
魔女先生は、人は愛する生きものである。余念なく、その一点だけに絞って書いたことが、この小さなリップクリームという存在を強めていると評します。
女性ならではの視点。当時は、ですがそうだったかもですね。
ちなみに、学生なのに孫の話まで? とも思われるかも知れません。自分の通った大学は生涯学習を推奨していて、少数ではありましたが定年後に入学されている方もいらっしゃいました。
それはさておき、不可視の「音楽」・「時間」でさえ、社会や人類を俯瞰的に見て発明を論じるものが多い中、この論が自己の価値観や経験に基づいた論であり、ある意味エゴとも言えるハズなのに美しいところが自分は好きですね(^^)
⑵ 髪ゴム
女性が髪を結ぶことによって、女性らしくあることを捨てず、あらゆるスポーツにおいての記録をのばすことを可能にした。
世界のプロテニスプレーヤーであるマリア・シャラポワのような、「恋もおしゃれも楽しみたい!」という、若きチャレンジャーたちが輝くための、画期的かつ低価格なものであることは間違いない。
……短い(驚)
はい。2つ目の紹介は「髪ゴム」でした。
提出目前に苦し紛れに出したんじゃ? と思われるかも知れませんね。
否定できない短さではありますが(笑)
魔女先生は気に入ったようです。
――強い女性は美しい。ブラボー、髪ゴム。
……清々しい!w
でも、男性である自分も納得しました。
もしなかったら、スポーツ選手ってみんなショートカットだったのかなぁと。
結上げだったり色々あるとは思いますが、「邪魔にならない」という一点は、女性にとってとても重要なことなんだろなと。
あとは、実際に長い方にお聞きくださいね(;・∀・)
さて、次に紹介するもので弟子たちの考える発明は最後。
最後は前半後半で魔女先生の評価がパキッと分かれた印象的なものです。
⑶ フタ
私の考える2000年最大の発明は「フタ」だ。フタは、私たち人類にとって大きな役割を果たしている。
例えばペットボトルやお菓子の缶、おもちゃ箱など。フタがあることによって、中身をこぼさないで運ぶことができる。近年は輸送機関が発達し、陸路だけでなく、海路、空路など様々な方法で大量のヒトやモノが運ばれる。フタがなければ、それらは目的地に到着するまでにほとんどこぼれ落ちて、なくなってしまうだろう。
と、ここまでが前半部。
魔女先生の評価は、可・否どちらだと思われますか?
答えは――
否です。
簡単に解説すると、2000年最大と銘打った発明を「フタ」とするなら、述べる論拠がペットボトルやおもちゃの箱では弱すぎる。
と、いうことですね。
その後に続く、輸送路の話に基づいて語る方が、論理の強度としては良いということが言いたかったのだと思います。
では、後半部に続きます。
しかし、フタの果たす役割はそれだけではない。私たちがフタをしているものは、目に見えるものだけではないのである。それは例えば、自分の気持ちであったり、誰かの秘密であったり、目に見えないものにもフタをする。全てをさらけ出さず、フタをする部分があるからこそ、私たちは円滑なコミュニケーションがとれるのではないだろうか。
「臭いものにはフタ」というという言葉が日本にはあるが、フタのない生活というのは、全くもって快適でなく、不都合であると思う。フタが発明されたからこそ、私たちはいま、それなりに快適に生活できているのではないだろうか。
論の内容は以上です。
魔女先生はこの後半部は高く評価しておりました。
フタが容器の中身を守るものなら、人の心も容器である。活き活きした抽象論であり、この抽象論において、現代社会においてなくてはないものにまで押し上げられていると。
ただ、結びの文章において、後日の参考文献である手記において、先生は次のように書かれています。
心という形のないものにはめるフタと、ここでいうモノ発明されたフタを一緒に論じるのは不自然だ。
文章の最後を、例えば次のように書き換えてみてはどうだろうか。
「臭いものにはフタ」というという言葉が日本にはあるが、フタのない生活というのは、全くもって快適でなく、不都合であると思う。フタの歴史がいつ頃始まったのか知らないが、器の中身をこぼさぬよう保護することに気づいた、この人間の知恵は現代にも受け継がれているのだ。
これでフォローできたのではないだろうか。つまり結びの言葉から「発明」という語を外して、文章をゆっくり締めてやるのである。
……誤差だと感じますか? 大きな変化だと感じますか?
読み手次第ではあると思うのですが、商業作家として活動し、魔女先生として弟子を持つ作家の研鑽は、なんといますか……焼く前のコショウか? 焼いた後のコショウか? くらいの違いにもこだわってるんだなぁと、趣味人の自分としては呆けてしまいますね(汗)
え? コショウの例えが下手? その二つの違いは明確すぎ?
良いのです。こういう下手くそなオチにもフタをしつつ、今回はおしまいにしますので(全然上手いこと言えてない(滝汗))
◇ 長きに亘る思い出話でしたね ◇
……ここまでお付き合いいただきましてありがとうございます(涙)
この回の文字数の多さもさることながら、魔女先生の同一授業で数えて4回目。
まとめを次回と考えると、5回に亘ってお送りすることになりましたからね。
まぁ、それだけ印象深い授業だったのですよ。
と、いうわけでそんな【2000年最大の発明】編も、次回でまとめです。
その間に何か雑談回が挟まるかは未定ですが、魔女先生がこの授業題材の期間、何を狙いとし、何を考えていたのか触れていきたいと思います。
次回もお付き合いいただけたら幸いです(^^)
誰かの何かになれることを願って。
ではでは◎
つくもの後夜祭 つくも せんぺい @tukumo-senpei
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