第14話 絵実vs聖紅
次は、絵実対聖紅の番だ。
李と桃子は観客席に移動する。リイリーは、李の隣にちょこんと腰をかけたが、メイリーは少し離れた所にそっぽを向いて座った。まだ、怒っているらしい。
絵実は緊張した顔で、席に座る。
聖紅は余裕の表情だ。
「そんなに緊張しなくて良いよ。ゆっくりやろう」
などと、声かけをしている。
開始ブザーが鳴った。
2人がヘッドフォンを着ける。
絵実が早速、リングに霧を張った。李も苦戦した霧だ。
「あらよっと!」
聖紅のフェアリーが、バサッと音を立てて、何か衣のようなものを翻す。
衣の風により、霧が晴れていく。
「私のフェアリー、ベルベットローズは布属性なんだ」
聖紅が笑みを浮かべる。
ベルベットローズは、ミニスカートのチャイナ服に2つお団子ヘアの可愛いフェアリーだが、先ほど、一瞬布みたいなものを出したのが、目に見えた。
「なっ!?」
絵実が驚いている。
その隙に、ベルベットローズが間合いを詰め、キックを繰り出す。
絵実のフェアリーはギリギリのところでそれを避けた。
ベルベットローズは更にキックを連続で繰り出し、絵実のフェアリーをリングの隅に追いやった。
絵実のフェアリーは、1回転し、リングの隅から抜けると、ベルベットローズに向けてパンチを出した。
その時、ビシッと音がして、絵実のフェアリーが倒れた。
李は何が起きたか分からず、目を見張る。
音の正体は布だった。ベルベットローズが布を持っているのが見える。布を鞭のようにして、絵実のフェアリーの拳に当てたのだ。
絵実のフェアリーが起きようとするが、更にベルベットローズがキックをした。
ごろごろと絵実のフェアリーが転がり、
「勝負あり!」
と桃子が大きな声で言った。
絵実は、顔を覆った。
「負けたー、悔しい。やっぱり聖紅さまは強いなあ」
2人ともヘッドフォンを外して、こちらへ向かってくる。
「いやぁ、初等部4年にしては、強いね。えっと、」
聖紅が言い淀む。
「草野絵実です」
「絵実ちゃんね、よろしく」
2人は握手を交わす。
4人は食堂で、お茶を飲むことにした。
「桃子さまと聖紅さまと一緒にお茶を飲む日が来るなんて……夢みたい」
早くも絵実はぼうっとしている。
「あの、絵実ちゃんは、初等部4年にしては強いって話、本当ですか?」
李は聖紅に聞く。
「ああ、本当だよ。かなり強い方なんじゃないかな」
聖紅が答える。
絵実は我に返って答えた。
「1学期のフェアリーバトルは、3位でした。準決勝で敗れて、3位決定戦で勝ちました」
「じゃあ、1位と2位は誰?」
自然と疑問が浮上してくる。
「2位は
絵実が言う。
「じゃあ、その林道未唯ちゃんに勝たないと、生徒会を去ることになるの?」
李は震え上がる。
「そうだよ」
聖紅が絵実から回答権を引き継いだ。
「ええーっ、勝てないよう」
李が弱音を漏らすと、桃子がフォローに入る。
「私は李さんに期待しているわ。未唯さんが、良くない訳ではないけれど。かつての由梨乃さんがそうだったように、生徒会に新しい風を吹かせて欲しいの」
「ま、総合成績かな。李ちゃんはフェアリーフェスティバルの実績もあるし。実績と成績の両方を鑑みるな、私は。でも、未唯ちゃんは凄いよ。成績も確か全科目90点以上取ってたよね。未唯ちゃんが生徒会メンバーだった当時」
聖紅が思い出すように言う。
「一部の噂だと、未唯ちゃんは生徒会に返り咲きたいみたい。それで李ちゃんが、未唯ちゃんの味方から攻撃されていたのもあるのかも」
絵実が続ける。
「じゃあ、攻撃されないためには、未唯ちゃんの仲間を黙らせるだけの実力を発揮しないといけないってこと?」
李は念のため、確認する。
「ま、そういうことになるね」
聖紅が頷く。
「そんなぁ」
李はまたしても頭を抱えたのだった。
自分は、果たして林道未唯を越えられるのだろうか?
フェアリーフェスティバル 汐月 礼子 @reiko-shiotsuki
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