第13話 クリスタルマーメイド

「ふいー、テスト終わったぁ。絵実ちゃんはどうだった?」

李が絵実に聞くと、爽やかな答えが返ってきた。

「80点くらいかなあ」

「え、80点も!?私なんて60点くらいだと思う」

李はへこんだ。

「あーあ、どうしよう。成績が悪かったら、きっと成美先輩に呼び出されるよ」

「成美さま?何で?」

絵実は首を傾げる。

「ほら、成美先輩って、怒ると迫力あるから」

「ああ、李ちゃんが成美さまに怒られていると思うと、少し笑えるかも」

「笑うところじゃないよー。何とかしなきゃ」

李は頭を抱えた。

「まだ、フェアリーバトルが残ってるでしょ。フェアリーバトルで挽回できれば、問題ないよ」

絵実が言う。

「フェアリーバトルはもっとダメだよー。だって、フェアリーを持ったの最近なんだよ?動かしたのも最近なんだよ?」

李が詰め寄る。

「分かった分かった。一緒に自主練しよう」

絵実が言うと、李がぱっと笑顔になった。

「えっ、本当?お願い!」

「フェアリーフェスティバルは良かったし、フェアリーの動きにも問題はなかったと思うけどなあ」

絵実がぶつぶつと独り言を言う。

「ま、とりあえずフェアリーリングに行きますか」

こうして二人はリングに行くことになった。

フェアリーバトルでは、フェアリーフェスティバルで使ったリングの4分の1程のリングを使う。場所は、フェアリーフェスティバルと同じ聖央華のホールで、生徒達が観戦出来るようになっている。聖央華の生徒会メンバーの試合は、観客席が埋まることが多い。それとは別に、練習用のリングがある。体育館の裏手に何個かリングがある。李達はそちらのリングへ向かった。

既に何組かが、フェアリーバトルに向けて練習をしていた。

「ここで良いかな。始めよう」

絵実が言った。絵実のフェアリーは、霧属性である。光は霧を晴らす。李はリイリーを絵実のフェアリーの対戦相手として選ぶことにした。

開始ブザーが鳴る。絵実のフェアリーが一面に霧を張ってくる。もわもわと見えない煙の中、絵実のフェアリーの手が伸びてくる。

「あっ、そこ!」

李が叫ぶ。リイリーは絵実のフェアリーの手を掴んだ。手を引っ張って、倒そうとするが、手だけでなく足も伸びてきた。蹴られる。リイリーが手を離して避ける。

リングの端まで行くと、光でリングを照らした。徐々に霧が晴れていく。

「うーん、効かなかった」

絵実が歯噛みをする。

その時、リングに2人の生徒会員が現れた。

「あら、李さん。楽しそうね」

「よっス」

桃子と聖紅だ。

「桃子先輩、聖紅先輩!」

李が驚いて声を上げた。絵実も驚いている。

「李さんもフェアリーバトルの練習?良かったら混ぜてもらえないかしら」

「はい、喜んで!」

李が答える前に絵実が叫んでいた。


4人で話し合い、李と桃子、絵実と聖紅が対戦することになった。

「李さん、お手柔らかに」

桃子が微笑む。李も返した。

「こちらこそ」

先ほどは、リイリーを対戦で使っていたため、今度はメイリーを使うことにした。

桃子のフェアリーは人魚姫のような姿で、ヒレを下にして、立っている。

「不思議かしら?私のフェアリーは元々この姿なの。フェアリーフェスティバルのときは、足を出せるけれど。名前はクリスタルマーメイドよ。よろしくね」

桃子が言った。まさに水晶のように、美しいフェアリーだ。

開始ブザーが鳴った。2人とも急いで、連携装置であるヘッドフォンを着けた。

『うぐっ!?』

瞬間、メイリーの呻き声が聞こえてきた。

李は一瞬何が起こったのか、分からなかった。

李がメイリーの毒を使う前に決着はついていた。桃子のフェアリーから水の手が伸びてメイリーの首を絞めていた。

「そんな……」

李は呆気にとられた。性能が違いすぎる。

勝負が終わって、リングを降りたところで、またしても李には予想も出来ないことが待っていた。

ボカっという音が辺りに響いた。

「がはっ!な、なんで殴るの!?」

メイリーが李の頬を殴っていた。

『この、うすのろまぬけ!まんまとやられたじゃないか!!』

李は頬を押さえた。

「ひーひー、自分のフェアリーに殴られてる人初めて見た!」

聖紅がお腹を抱えて笑っている。

「笑い事じゃないですよ、もう」

李は不満げに、メイリーに尚も怒られながら、絵実と聖紅の対戦を見ることにした。


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