第12話 お勉強会
生徒会の大広間に生徒会員全員が集まり、真剣な顔をして、目の前の大画面を眺める。
目の前のスクリーンには、フェアリーフェスティバルのドキュメンタリーが映っていた。
李と桃子が一緒に練習をしているところ、由梨乃が李にフェアリーの動かし方を教えているところ、聖紅が李にホワイトチョコレートを差し入れしているところ、舞台袖で気合いを入れているところ、舞台で皆が一斉にヘッドフォンを着けるところ……。
思い出すと、少し涙が出てきそうになる。
「あ、聖紅くん。ウーララのホワイトチョコレート、売り切れ続出みたいだよ」
横で一緒にドキュメンタリーを見ていた有馬が聖紅に話しかける。
「え、また!?やだなー、そろそろ店員さんからクレームが来るかも」
聖紅は頭を抱えている。
その時、ピロンッと音がした。リイリーだ。
「メールだ」
リイリーの頭上に手紙がパラ、と開かれた。
手紙には、以下の内容が書かれてあった。
『フェアリーフェスティバル観たよ!すごく良かった!ジャックと豆の木面白かった!葛藤桃子さまと一緒にユニット組めて良かったね。フェアリーバトルの結果も楽しみにしてるから教えてね』
メールは麻友からだった。
「麻友だ」
呟くと、早速隣にいる聖紅が覗き込んでくる。
「この前、フェンスによじ登ってた子?フェアリーフェスティバル観られて良かったね」
「麻友は昔から大胆なことをする子なんです」
李はため息を吐いた。フェンスによじ登ったときはどうなることかと思ったが、無事で良かった。
「こうやって、ドキュメンタリーも無事に公開されたことですし、改めて乾杯しましょ。有馬さんも一緒に」
桃子が言い、全員で紅茶で乾杯した。
2日後、李には鬼特訓が待っていた。
「さあ、今日は気合いを入れて勉強するぞ!」
何故か李の机の周りには、聖紅、嵐藍、由梨乃とメンツが揃っている。
「今日は、つるかめ算、植木算、流水算をやるぞ!」
今日は、算数をやるらしい。
「鶴の足は2本で、亀の足は4本だから……」
「ふむふむ」
「足の合計本数と、全部で何匹居るかを考えれば良いの」
「ふむふむ」
「計算すると、こうなるでしょ?」
「そうですね」
「じゃあ、次は自分でやってみて」
「うーんと、ここがこうだから、こうしてこうして……出来た!こうですか?」
「正解。じゃあ、発展問題ね。これはどう?」
「え!?うーん、分からないです……」
「ここをこの形にすると、つるかめ算になるでしょう?」
「な、なるほど。でも、テスト本番で出ても、出来る気がしないです」
「そんな弱気ではいかん!!」
聖紅がずいっと割り込む。
「その弱気が足を掬われる元になるぞ。いいか、気合いだ、気合いを入れるのだ。弱気になった途端、他の人につけ入れられる!」
「何をそんなに敵がいるように……。先輩方の成績はどうなんですか」
李は試しに聞いてみる。
「「「学年首席」」」
参考にもならない答えが返ってきた。
「学年首席を取らないと、生徒会から除籍だから」
聖紅が言い放つ。
「えっ、そんな……」
「正しくは、フェアリーバトルとテストの合計で、優秀な成績を修めないと生徒会メンバーが変わる恐れがある。桃子先輩は、李ちゃんにフェアリーバトルの才能の片鱗を見て、生徒会の一員にすることを決めたの」
由梨乃が付け足す。
「そうだったんですか」
「そう、だから、気合いを入れて勉強しなくてはならないのだ!他の人に取って替わられないためにも!」
聖紅が言う。
3人とも、生徒会から除籍される不安と戦ってきたのだろうか。
そこまで考えて、はたと気付いた。由梨乃も一般校から聖央華に転校してきたはずだ。由梨乃はどうだったのだろうか。
「由梨乃先輩は聖央華に入った時、勉強面はどうだったんですか」
聞いてみる。
「私は、元々学習塾に通っていたから、勉強面では、それほど困ったことはなかったの」
またしても、参考にならない答えが返ってきた。
「あぁぁぁ、このままだと生徒会メンバーが変わるぅぅぅ」
李は頭を抱えた。
「そうならないためにも、私達が勉強を見に来たんじゃない」
3人が言う。
「李ちゃんが生徒会メンバーでいて欲しいから、私達はここにいるの」
3人が救世主に見える。
「先輩……!」
李はズビビビと鼻をすする。
「あ、どうにもならなくなったら、成美先輩を呼ぶから」
嵐藍が笑顔で言う。
李は成美を思い浮かべた。
『こらっ、こんなもんも解けんのか。授業中ぼーっとしていたな!』
『どうやったら、こんな答えが出てくるんだ!廊下に立っておれ!』
成美が言いそうなことが思い浮かんで、李は身を縮こまらせた。
「やっぱり頑張ります!」
李は成美を呼ばれないよう頑張る、と胸に誓った。
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