第11話 フェアリーフェスティバル④

高等部3人のユニットが始まろうとしている。3人は制服に着替えていた。

「さあ、行きますわよ」

桃子が言った。3人とも笑顔だ。プレッシャーなど感じていないように見える。

「えいえいおー!」

気合いを入れて、3人は舞台へ上がった。

リングの左右には、水が噴き出している。きっと、桃子のフェアリーの能力だろう。

音楽が鳴り始めた。聖紅と成美のフェアリーが、天女の格好をして、水の前で舞を披露する。ピアノの音に合わせて、衣を翻す。

曲が中盤に差し掛かった頃、リングの中央に貝殻が現れた。貝殻が開くと、人魚の格好をした桃子のフェアリーが佇んでいる。桃子のフェアリーの貝殻の後ろからも水が横に噴き出し、虹を作った。桃子のフェアリーは貝殻の上で、舞った。それは美しく、壮観だった。

曲が終わると、水は引き、貝殻はゆっくりと閉じた。会場に小さな拍手が響いた。

3人が舞台袖に戻ってくる。桃子は自分の出番から、怒涛の5曲連続だ。次が4曲目になるが、疲れた様子一つ見せていない。次の衣装に、淡々と着替えている。

「さあ、行きましょう、李さん」

桃子が言う。李は頷いた。

次は、桃子と李のユニットだ。李の進言から実現したユニットである。そのため、李はこの曲を失敗して台無しにするわけにはいかなかった。

2人が舞台に立つ。初等部ユニットの時は、メイリーが登場したため、今回は、リイリーが桃子のフェアリーと踊る。2人と、そのフェアリーは、片袖がオフショルダーになっているTシャツに、フレアスカートを着ていた。2人同時に、ヘッドフォンを着ける。音楽が鳴り出す。ポップな曲調で、リイリーと桃子のフェアリーは手で矢印を作って左右に振る。2人の間で『矢印ダンス』と呼んでいたものだ。ステップを前後に踏む。リイリーはメイリーと違い、反抗的でないので、やりやすい。ダンスも簡単にしてもらえた。リイリーと桃子のフェアリーが手を取り合って反転する。また、矢印を上下左右に振る。会場が沸いた。メディアのカメラがリングの脇に据えられている。リイリーはそのカメラに向かってウインクした。

曲が無事に終わり、舞台袖に帰って来た。皆は既に、黒いTシャツに着替えている。李と桃子も急いで着替えた。

「さっきのダンス、良かったよ」

聖紅が李に話しかけた。

「ありがとうございます」

李は素直に返す。

「最後まで気を抜かず行きましょう。えいえいおー!」

桃子が気合いを入れる。

「えいえいおー!」

舞台袖なので、小声で手を合わせる。

また、最初の曲と同様に、リングの外に全員が揃った。皆一斉にヘッドフォンをかける。

曲がかかる。

『綺麗に見えるけれど 決して綺麗でない部分もある

 羨ましがられるけれど 陰では努力をしている

 いくつもの練習の日々 上手くいかないこともあった

 悩む日もたくさんあった それでもやめずにここまで来た』

全員のフェアリーが一斉にロンダート、バク転を決める。李が一番練習した部分だ。リイリーとメイリーも無事に決まった。

パンッと音がして、紙吹雪が舞う。

『さあ あとは前に進むだけ 明日が私たちを待っている

 そう 明日はきっと輝く日になるはず 見てていて』

会場に拍手が沸き起こった。いつまでも鳴り止まない歓声の中、李たちも、フェアリーも一斉に手を繋ぎ、お辞儀をした。


「フェアリーフェスティバルお疲れ様ー!かんぱーい!!」

李たちは生徒会室にある、アッサムティーとお茶菓子でお疲れ様会をした。

皆それぞれに椅子に寛いでいる。

「フェスティバルが終わったら、今度はテストと、フェアリーバトルだからね。絶対に生徒会員として、てっぺんを取ること!」

聖紅が真面目なようでいて、ふざけたような顔をして言った。

「ええー、私テスト苦手です」

李が言う。李は転校生であって、本来の聖央華の偏差値と釣り合っていない。勉強についていけているとは言い難かった。

「大丈夫!私達全員が勉強見てあげるから!これから地獄の鬼勉強だぞ!!」

「ひえええ!!」

李の災難はまだまだ続きそうなのであった。

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