第30話「歳をとる」
あるおじさん、鏡を見てちょっと悲しくなってしまったらしい。
「はぁ、俺も歳をとったなぁ。白髪も増えたし、シワも増えた気がするし、二十代の頃はもっとピチピチしてたと思うんだけどなぁ」
もう独り言にしては声が大きすぎることを言って、ため息をつく。おじさんも四十代になり、色々と見た目に変化があったようだ。
しかし、仕方がない。人間、生きていれば必ず歳をとる。一年に一歳、誰でも平等にその時は訪れる。二十年前とは違って当たり前なのだ。
おじさんもそのことは分かっている。しかし歳はとりたくないものだと思ってしまうらしい。人間とはなかなか難しい生き物である。
「……ま、それでもこうして元気なのはありがたいかな。やっぱ人間元気でいないとな。さて、今日も軽く一杯呑んでくるか」
また独り言にしては声が大きすぎることを言って、おじさんは街へくり出す。おじさんはお酒が好きだった。強いというわけではないが、居酒屋で軽く呑むのが楽しみでもある。
おじさんも歳はとっても楽しそうだ。今日も楽しいお酒が呑めるといいのだが。
【掌編小説】あふれる物語 りおん @rion96194
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