友達からの連絡

藍川ユイ(藍川結以)

いいわけ

「それで、ブロックするのも怖くてそのままにしてるんだけど、毎日メッセージがきてて……」


 急な連絡だった。友達から話をしたいと言われて仕事終わりに家に招いたら思ってもみない話だった。なんとストーカー被害に遭っているという。


「警察には行ったの?」

「ううん。行ってない。それで逆上されて何かされたら……って思ったら怖くて」

「まあ、そういうこともあるよね」


 下手なことは言えない。自宅も知られていると言い、もし何か間違えば大変なことになるかもしれない。


「でも、やっぱり警察には行ったほうがいいよ。必要なら私も一緒に行くし」

「……」


 少しの沈黙の後、彼女がぽつりとつぶやいた。 


「すごく、怖かったんだ」

「そうだよね……怖かったよね」


 理屈の上では警察に相談した方がいいなんて本人もわかっているのだろう。けれど気持ちがついてこないのかもしれない。

 それなら今はとにかく気持ちに寄り添うしかない。そう思った私は彼女をなんとか安心させようとしていた。


「私できることがあったら言ってね。こんなの怖いに決まってるよ!」

「ありがとう。話してよかった」

「ううん。話ならいつでも聞くから!」

「私、すごく怖かったの」

「うん」

「だから、仕方ないよね?」

「え?」

「そろそろ帰ろうかな。今日は話聞いてくれてありがとう」


 彼女はどこかすっきりとした表情をしていた。


「ねぇ、よかったら泊まっていかない? その方が安心でしょ?」

「心配してくれてありがとう。でも、今日は帰るね。気持ちわかってくれて嬉しかった」

「大丈夫なの?」

「大丈夫だよ」


 彼女は笑っていた。


「もう怖くなくなったから」


 彼女は、笑っていた。



 翌日。

 いつものように半分聞き流しながら朝のニュースを見ていた。彼女のマンションが映っていた。


『次のニュースです。昨日、✕✕市で男性が殺害され……』


 それを聞いて、私は彼女が相談にきたのではなかったことを知った。

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友達からの連絡 藍川ユイ(藍川結以) @aikawa_yui

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