No Ifs and Buts

澤田啓

第1話 あおぞら

 本当は……こんな筈ではなかった、そう……私だってこんな結末を望んでいた訳ではなかった。


 私が悪いと云うことは私にも理解できる、しかし……決して私だけが悪かったのではないことは知っておいて欲しい。


 この期に及んでもの顔が浮かんでくる度に臓腑が煮え繰り返り……怒りのあまり視界が真紅のヴェールに覆われてしまう。


 自身も自分の意に染まぬ主義や主張を迫害し、反体制派だと罵っては傷つけ……犯し……殺し回っていたのに、どうして私だけが残虐非道な虐殺者であるだの、覇権主義の独裁者だのと一方的に吊し上げられなければならなかったのだ。


 私は本当に虐げられ、搾取され……非人道的な扱いを受けてきた、我が同胞を窮地から救い出したかった。


 そして往時の権勢を失いつつあった、我が国を……もう一度だけでも世界の中心に据えたかった。


 経済力や資源に多少は恵まれていようが、我が国は凍てついた広大な大地を抱えているだけの張り子の虎でしかない。


 金と欲望と……薄ら汚い利己主義に塗れて我々の清貧たる主義は、寝返りと裏切りの中に置き去りにされ三十年間も辛酸を舐めさせられ続けてきた。


 そう、この蜂起こそは我々が大国としての誇りを取り戻すためのいしずえとなる筈だった。


 同胞を救い出し、迫害的な差別主義者に正義の鉄槌を下すだけの簡単な作業。


 それをは、自分のことは棚に上げた二枚舌と……卑劣な詐欺師に相応しい巧妙な弁舌で、世界の半分の同情を集めてしまった。


 そして……我々の持つ資源を目当てに媚びへつらい……揉み手で擦り寄ってきた人々の、素早くも白々しい手のひら返しによってもたらされた決して小さくはないダメージ。


 内側と外側から責められ、苛まれ続ける私が……最期にこの道を選んだことは、仕方のない選択でしかない。


 そう……私が世界を滅亡に導くこのボタンを押下するのは……私が悪いのではない……お前達のせいなのだ……。

 

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No Ifs and Buts 澤田啓 @Kei_Sawada4247

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