帰り道
「まったく、なんだって学校に来たんだよ。」
「別にどこに入るかなんて自由だろ?」
ま、それもそっか。
「なるほどねー。つまり敦也の昔の友達ってわけだ。」
「なんか適当だな、璃子…ま、そんな感じなんだけどさ。」
「そうそう、坂田さん、こいつの昔話聞く?色々あるぜ?」
キラーン、と璃子の目が光ったのを俺は見逃さなかった。
案の定興味津々といった様子だ。
まじでやめてくれよ。
「じゃ、せっかくだしどっかに遊びに行く?なんなら栞たちも誘って…」
「いや、多分大丈夫じゃないかな?もういるみたいだし。」
俺が振り向きざまに電柱の影を見るとやはり、その2人はそこにいた。
「びっくりした…いたなら言ってくれればよかったのに」
「それだとつまんないでしょ?」
幼い頃、俺は施設に連れて行かれた。
そこから見えるのはただ一面灰色の天井だけ。
俺はその風景しか知らずに、外も同じようなものだと思っていたりもした。
だが、外に出て璃子、栞、海稀たちと出会い、俺はこの空を知れた。
俺が小さな時、親とみていた空もこんなんだったんだろうな。
「ありがとね、みんな。」
「急にどうしたのさ、そんな感傷に浸って。らしくもないな。」
「俺はきっと明日も、忘れないよ。」
「なんかカッコつけてない?」
この空を、この空を見せてくれたみんなを。
きっと一生、いや、たとえ死んだとしても、生まれ変わっても、
俺は忘れないだろう。
阿紫上敦也の日常 唯月逆音 @kinnreki
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