見張り兵の懺悔 ―初手3ランホームラン―

ぶらボー

ハイパー言い訳タイム

 アンタガバカチン王国は危うく滅亡するところであった。


 突如としてひゃくおくまんにんの魔王軍が国境からローラー作戦を開始し、いちおくまんにんいた国民は215人にまで減らされたのである。


 この絶望的状況の中、大魔導士ペッタンコの全宇宙最強魔法ジャッジメントフラッシュにより魔王軍は倒され、全滅する事だけは辛うじて免れたのだった。




 その王宮、謁見の間。


 バカチン王に呼び出されたのは二人の見張り兵である。プガッチィ・スーパーハヤイ三十五等兵とヤンスデス・チェンテナリオ100世三十五等兵だ。


「其方らを呼んだのは勿論、先日の魔王軍襲来の件でじゃ」


 バカチン王は低く、ゆっくりと口を開いた。


「何故ひゃくおくまんにんもいる魔王軍の接近に気づかなかったのか……聞くところによると貴君らが国境近辺にある突破された門の見張りを担当してたとのことだが――」


 バカチン王は少し間を置いて、震える喉から絞り出すように問うた。




「お主らそのとき家に帰ってWBC見てたらしいな?」




 相手が王様であるにも関わらず、プガッチィは即座に言い訳した。


「見ないという選択肢があります? 6年ぶりですよ! この時をペッパーミルで胡椒挽きながら待ってたんですよ!?」


 ヤンスデスも続く。


「初手で看板直撃3ランホームランするような奴が悪いでヤンス!」

「そうですよ! 私たちは悪くない! 悪いのはあのドリームチームです!」


 プガッチィとヤンスデスの二人は口から唾が飛ぶ勢いで叫ぶ。


「いやもう其方らなんと言うかもう凄いと思う。ワシじゃなかったら絶対処刑だよ?こんなの」


 バカチン王は額に手を当てうなだれた。


「で、私達はどうなるんでヤンス? 処刑はされないと思ってるんですが謹慎処分でヤンスか?」

「なんで謹慎で済むと思ってるの、どこからその自信が出てくるの其方……いや、其方らを呼んだのは処分についてではない。其方らと密約を交わそうと思っての」

「密約?」


 バカチン王は身を乗り出すようにして二人に顔を近づけた。


「お主ら知っとるんじゃろ? あの時……ワシ、さっさと司令本部立ち上げて軍やら民やらを纏めなきゃいけなったんだけど、もの凄い遅れちゃってさ。その理由が――無料公開されてた医療漫画一気読みしてたせいってコト」

「あのギュッ! て奴読んでたんですよね」

「そうそれ!」


 バカチン王は玉座から離れてさらに二人に顔を近づける。


「というわけでじゃ、ワシは其方らがWBC見てたのは内緒にしておくから、其方らもワシが漫画読んでたの秘密にしておいてくれない?」

「わかりました」

「いいでヤンスよ」




 だが全ては無駄であった。


 謁見の間を78台の防犯カメラで監視していた大魔導士ペッタンコに全てが筒抜けだったのである。


 全宇宙最強魔法ジャッジメントフラッシュにより王宮は吹き飛ばされ、三人は地獄に堕ちた。


 おわり

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