いいわけ【KAC20237】

三毛猫みゃー

いいわけなんていらないのよ

「やあ、遅くなってごめんね、やっと約束が果たせそうなんだ」


 もう私の事なんて忘れてしまって来てくれないと思っていたわ。


「遅くなったいいわけはしないよ、君もそんなこと望んじゃいないだろ?」


 私は花束を持っている彼を無言で見ていることしか出来ない。

 彼が言うように私はいいわけなんて聞く必要はないと思っている、だって彼は誰よりも努力家で優しくて力強くて、そして私を愛してくれていた。


 それからしばらく彼は私に向かっていろいろな話をしてくれた。

 研究が行き詰まった事や、スポンサーがなかなか集まらなかった事、クラウドファンディングで資金をなんとか集め研究を進めたこと。仲間が増えいつしか国家プロジェクトにまでなってついには念願の薬が完成した事など。


 結局彼の願いがかなったのは私と別れてから30年の月日が経っていたようだ。

 私にはとっくに時間の感覚なんて無かった、確かに彼はずいぶんと年を取っているようだ。


「君との別れから30年だ、色々とあった一度連れてきただろ?その彼女と一緒になって子供も出来た、こんな研究バカの僕に良く未だに付いてきてくれていると思う」


 本当にね、私ならどうしたかしらね。

 私も彼女と同じであなたを支えたと思うわよ。


「彼女と一緒になった事を君は裏切り者と思ったかな」


 そんな事ないわよ失礼な人ね。


「君ならそんな事ないと言ってくれたかな」


 よくわかっているじゃないの、それに私はそんなに嫉妬深くないわよ。


「君のために作り始めた薬だけど君との最後の約束は守れそうだよ」


 彼は手に持っていた花束を私のお墓の前に供えた。


 約束を守ってくれてありがとう。

 私はそっと彼に抱きついた、幽霊だから抱きつけないけどねこういうのは気持ちが大事なのよ。


「それじゃあまた来るよ」


『また来てくれると嬉しいわ』


 私の声が聞こえたのか驚いた表情で振り返り気の所為かと苦笑を浮かべ彼は去っていった。

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いいわけ【KAC20237】 三毛猫みゃー @R-ruka

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