KAC20237 これからの私達にエールを!
日々菜 夕
これからの私達にエールを!
今日は日曜日。
普通のお店ならば稼ぎ時なんだろうけれど……
うちはうち、よそはよそ。
そんなわけで。
お店は、お婆ちゃんとみゃーこに任せて河上君とのデートである。
隣街まで行って映画を観終わり。
今は、ちょっぴりオシャレなカフェに居る。
映画の感想を語りあおうという流れだ。
まぁ、悪くないだろうと思われるかもしれないが。
私的には、ちょっぴりムカついていた。
好きになっちゃった男性のために7つのお題をクリアしていく女の子。
無理難題に挑んでいくヒロインを私は全力で応援していた!
なのに……
「浮気してたってどういうこと!?」
「あはははは。あの、いいわけはないよね……」
苦笑いを浮かべる河上君。
そうなのだ、ヒロインが涙ながらに頑張っていた時に。
彼氏は、他の女の子と仲良くしていたのだ。
「そうだよ! いいわけないよね! あんなの!」
「だよね。ボクもお題をクリアしたらハッピーエンドになるものだと思って観てたから意外だったよ」
つまり、バッドエンドな映画だったのだ。
にもかかわらず。
少なからず影響を受けた私達は、二人そろってイチゴパフェをぱくついていた。
なんでも、イチゴパフェを食べると幸せがやって来るという設定で。
ヒロインがよく食べていたからだ。
「あぁ、それにしてもムカつくなぁ!」
「まぁ、映画に関して言えばボクも同感だけど……」
「同感だけど何!?」
「こうして
ちょっぴり卑怯ではないだろうか?
子供みたいに純粋な笑みを向けられたら私の怒気も抜けていってしまうというものだ。
「もしかして、子供みたいだとかって思ってないよね?」
「まさか。こうしてお互いの事を知っていくって意味で言えば、いい経験だったと思うし」
「いい経験かぁ……言われてみれば、そうかもね」
良くも悪くも河上君が、あの彼氏に同情しちゃうような人だったら私達の関係もバッドエンドまっしぐらだったと思うし。
ならば、ここは一歩踏み出すべきであろう。
私は、自分のイチゴパフェをスプーンですくい河上君に向けて突き出す。
「はい。あ~ん」
「え?」
ビックリして顔を真っ赤にしてる河上君。
ちょっぴり可愛いかも。
「いいでしょ。もう私達……その、キスしちゃった仲なんだし」
「そ、そうだよね」
「それに、こういうのってデートみたいでいいでしょ?」
「あ、うん。そうだよね。いただきます」
まるで、なにかに怯えるように私のイチゴパフェを食べる河上君が可愛い。
「じゃぁ、お返しに。あ~ん」
と、言って河上君がスプーンにイチゴを乗せて突き出してきた。
食べ方から、好きな物は最後に食べるタイプだと思っていただけに意外ではあるが。
女は度胸!
これもヒロインが良く言っていたセリフの一つだったりする。
「はい、あ~ん」
河上君からもらったイチゴは、やっぱり少し甘酸っぱくて。
なんだか、今日の私達みたいだと思っちゃったりもした。
これから、私達の関係がどうなるのかは分からない。
でも、いい方向に向かうと良いなぁ。
おしまい
KAC20237 これからの私達にエールを! 日々菜 夕 @nekoya2021
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