な、な、な、なんだよ、これは!!

いいぞ、じゃあ、望み通りに!!

「いい加減にしろ!」


 怒鳴られた。


 おまえのほうが悪いくせに。

 何だよ。

 失恋した私に彼女の自慢でもしに来たか?


「そんなわけ、あるか!」

「だったら、何だよ……」

「俺は、おまえに……」


 大きなあいつが、小さな包みを突き付けてくる。


「バレンタインのお返しだ! おまえが手作りなら、俺も……」

「な、なんだよ、それ?」

「わ、分かんねえかなあ! 分かるだろう?!」

「分かんねえよ!」


 売り言葉に買い言葉。

 いつもの関係。

 それに区切りをつけたかった、先へ行きたかったのは私のほうだったのに。


 卒業式で告らていたあいつ。


 それを見て逃げた私。


 それからずっと、私はベッドのなか。

 くちゃくちゃな顔。髪。部屋。

 久しぶりに私の部屋に来た、あいつ。

 なんかもう、頭がぐちゃぐちゃで。


「ああ、もう! 分かった!!」


 あきれられた?

 怖い。

 あいつの顔を見るのが。

 断られるのが。


「いいか! 俺の趣味は分かっているな! お前だけが知るもんだ!! それを見やがれ!! それが俺の答えだ、返事だ!!」


 勇ましい足音が、来たときよりももっと大きく、去っていく。


 机の上に置かれていたのは、苦いクッキー。

 何だよ、これ、私のよりもよっぽど、まずいじゃないか。


 スマホを開く。

 あいつからのライン、いっぱいあったけど、それよりも……。


 あいつが小説投稿サイトに秘かな趣味を公開しているのは知ってる。

 下手くそなそれ、ほとんど私しか見ていないんじゃないか?


 新作?


 あいつ、ずっと忙しかったはずなのに……。


「な、な、な……」


 ずっとずっと好きだった彼女。

 妄想していた、デート。

 とことんあまい恋愛小説。


 こ、こ、これ……。


 私は布団から抜け出した!

 すぐにシャワー浴びて。

 精一杯のおしゃれして。


 あいつのところへ!


 いいわけ、聞かせてもらうぞ!

 こんなもの大っぴらにしたことのっ!!


 初めてのデートは青空デート。


 それって、昔、私がおまえに柄にもなく語ったことじゃないか!!

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な、な、な、なんだよ、これは!! @t-Arigatou

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