Г
九戸政景
Г
日も暮れ、微かな街灯のみが照らす薄暗い校内。その中である教室だけは紫色の光を放っており、そこでは二人の男子生徒が向かい合って一つの机を中心にして座っていた。
「さあ、お前の番だぜ?
「引くのは俺じゃない。お前だ、
「ははっ、それはどうだろうな。さあ、引けよ」
「ああ」
瑠志亜は答えた後、カードの束に手を置いた。そして数を数えながら引いていったが、六枚まで来た瞬間に楓芽は手でそれを制した。
「待った。お前……今、二枚同時に引いたか?」
「……いや、一枚ずつ引いて今は六枚目だ」
「怪しいな……ちょっと確認させてもらうぞ。ルール上、一度に引けるのは七枚までで、イカサマが発覚したら即敗退だからな」
「ああ」
瑠志亜は引いたカードを楓芽へ渡した。そして楓芽がカードを見ていたその時、瑠志亜は楓芽がここまでに引いたカードの山を指差した。
「七種、お前こそイカサマをしてるんじゃないか? 『Г』を引いたのにそれを申告しないというイカサマを」
「は? お前、一体何を……って、はあ!?」
すると、楓芽のカードの山の頂点には中心に禍々しい悪魔が描かれた『Г』のカードが置かれていた。
「ど、どうして……」
「イカサマは暴かれた。ルール違反でお前の負けだ」
「ま、待てよ! 俺は何も……!」
その瞬間、楓芽の体は少しずつ闇の中へと消えていき、楓芽と『Г』を含めたカード全てが消えると同時に瑠志亜の隣には七枚の羽を生やしたメガネの男性が現れた。
「勝利おめでとう、瑠志亜」
「……お前の能力を使ったからだけどな。まったく……」
「だが、バレなければ問題ない。瑠志亜のようにスポンサーがついていないプレイヤーが不利になるのは仕方ないだろう?」
「……とりあえず帰るぞ。七種の事は全員の記憶から消えてるだろうが、俺だけは覚えておいてやろう」
「物好きだな、お前も」
「うるさい」
男性の言葉に対して静かな声で答えた後、ほとんどが暗闇に包まれた校内を瑠志亜はゆっくりと歩き始めた。
Г 九戸政景 @2012712
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます