らっぱすいせん 🌞
上月くるを
らっぱすいせん 🌞
ささやかに噛みしめるうれしいことがあったその夜は、やっぱり眠りが浅かった。
慶事もストレスだそうだから当たり前と受け留め、うつらうつら一夜を過ごした。
何度目かに目覚めると📻の時計表示は4:44、腕を伸ばしスイッチを入れる。
深夜便の渋い女声が「今日のお花は喇叭水仙、花言葉は尊敬、いい言葉ですね~」
そうだった、昨日は尊敬の日だった、健気にがんばっている若い人たちへの……。
大人がだらしない時代にも、子や孫世代は一所懸命に生きていることを尊敬する。
昼間、花粉症を警戒して帽子、サングラス、マスクの完全武装で出かけた散歩中、民家の垣の内外の陽当たりのいい場所に凛然と清らかに咲いている喇叭水仙を見た。
昨秋、首にエリザベスをつけられて当惑顔だった外飼いの茶色いミックスさんも、傷は完治したと見え、自分の小屋の前で、のんびり四肢を放ってくつろいでいた。
🐶
ラジオはなにかの団体の理事を務める高齢男性へのインタビューに替わっている。
役職に興味はないが、金融業界ひと筋だった現役引退後の挑戦の数々に聴き入る。
アートからスポーツまで関心のジャンルが幅広く、いずれをも深く追求して来た。
燦然たる名誉職はたゆまぬチャレンジの結果としてついて来たものであるらしい。
そういえば、幸せホルモンのドーパミンは、新分野への挑戦で活発になるという。
自らを振り返っても、沈潜していた心は俳句やネット小説の創造作業で救われた。
ただ、いっときは高揚した状態にもすぐに慣れてしまうのが人間なので(笑)輝くような幸福を持続したかったら、つぎつぎに新たなチャレンジが必要であるらしい。
⚽
番組中、思いがけないお名前をお聴きした。
日本サッカー界の大御所と言われるМさん。
あらら、わたしったら、サッカーのことはなにも知らないと思いこんでいたけど。
仕事時代、当時は九州のチームの監督でいらしたМさんと何度もお会いしていた。
ひとりむすめさんが芸能関係の方で、一念発起して司法書士の資格を取得し開業。そのときばかりは父親の照れ笑顔にもどって話してくださったことを記憶している。
🌙
番組が替わったところで起きて、窓のカーテンを開けると、冴えざえとした半月。
付け合わせのレモンを思わせるきれいな金色が南の空にくっきりとかかっている。
パソコンデスクの卓上カレンダーを確かめると、2023年3月もちょうど半ば。
東の山並みの向こう側には、満を持して(笑)太陽がスタンバイしているらしい。
らっぱすいせん 🌞 上月くるを @kurutan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます