ラッキーナンバー

藤光

幸せの数字

 7月7日に生まれたお父さんのラッキーナンバーは「7」だ。旅行先で宿泊するホテルの部屋番号は七号室だし、通勤で乗る電車の車両も七号車を選ぶ。もちろん、マイカーのナンバープレートだって番号は「7」だ。


「大学に合格したときの受験番号は『107』だったし、お母さんとはじめてデートした日も12月7日だったんだよ」


「7」は、お父さんを幸せにしてくれる数字らしい。そのお父さんが子どもに付けた名が「奈々子」。わたしがいつも幸せでいられるよう幸運を運ぶ数字のついたわたしの名前。


 でも、わたしが生まれた後、お父さんは「7」から嫌われてしまったかもしれない。


 ナンバープレート「7」番の車は交通事故で壊れてしまったし、7つ目の職場でもうまくいかずに退職し、わたしが生まれて7度目の誕生日、お父さんはお母さんと離婚した。


 それでもお父さんは、自分のラッキーナンバーが「7」だと信じて、小さなアパートの7号室に住み、毎朝、7時に起きている。毎年、別れたお父さんと会うことになっている7月7日は、わたしの誕生日でもある。


「やあ。また、大きくなったね」


 お父さんとお母さんが離婚して10年がたつ。お母さんは昨年、再婚した。お父さんは、毎年、会うたびに小さくなっていくように感じる。待ち合わせは、決まって駅前のカフェに午後7時。わたしはこの日が憂鬱だった。


 もう「7」にこだわらなくていいんじゃない? ちっともお父さんを幸せにすることのない数字が嫌いだった。


 もう「7」はお父さんのラッキーナンバーじゃないよ。わたしは自分のことが嫌いだった。


「そんなことない。『7』はいまでもぼくのラッキーナンバーだ。なかでも7月7日は特別さ。ぼくの誕生日だし、奈々子の誕生日でもある。毎年、きみにも会えるしね。こんなに幸せな1日はないよ」


 わたしも「7」のことを好きになりたい――。


「17歳の誕生日おめでとう」


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ラッキーナンバー 藤光 @gigan_280614

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ