戦え!アンラッキー7!【KAC20236『アンラッキー7』】

石束

戦え!アンラッキー7!【KAC20236『アンラッキー7』】


 ここは、とある地方都市の市立体育館。

 白熱灯が照らす集会場にパイプ椅子。前方にはホワイトボードとプロジェクター。

 大漁旗柄の長半被を着た男が明るい笑顔で観客を鼓舞している。


「はっはっは! 皆さん笑顔です! 笑顔があれば大丈夫!」

 底抜けに明るい声だった。

「生きていればいろいろあるでしょう!悲しい事や辛い事、理不尽な事や不幸な事――ですが! 世の中はすべて気の持ちよう!前向きな気持ちでいれば、必ず道は拓けます! さあ皆さん、共に笑いましょう!グッバイ!ネガティブシンキング! ハロー!ポジティブシンキング!」


『グッバイ!ネガティブシンキング! ハロー!ポジティブシンキング!』


 秘密結社ガンダーラ幹部グッバイバンシーは今日もセミナーを開いていた!


 こうして彼は、不幸な人を見かけては集会に誘い込み、言葉巧みに明るい気持ちにさせているのだ!


 だが、天網恢恢疎にして漏らさず! ヒーローは悪を見逃さない!


「そこまでだ! いい加減なことを言って、人を惑わせるな!」

「くっ! 現れたか!」


 ばさり、と、お祭の半被を翻しグッバイバンシーが振り返れば、体育館の中二階という中途半端な場所に、七つの人影が!


「やはり! お前たちか『アンラッキー7』!」


 その言葉に応える様に、七人の戦士が名乗りを上げる!


「腹立つくらいに出会いがない!――アンラッキーレッド!」

「朝の占いは必ず残念さん!――アンラッキーブルー!」

「たどり着いたらいつも雨降り!――アンラッキーイエロー!」

「惚れた相手は大体彼女もち!――アンラッキーピンク!」

「立った茶柱見たことない!――アンラッキーグリーン!」

「列に並ぶと前の客で限定品が終わる!――アンラッキーブラウン!」

「球場に行くとチームが負ける!――アンラッキーグレー!」


「何もなければそれで幸せ! アンラッキー7!」


「………」


 ――強く生きてほしい。と、グッバイバンシーは思った。



 



 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

戦え!アンラッキー7!【KAC20236『アンラッキー7』】 石束 @ishizuka-yugo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ