フェレス先生の特別講義

水玉猫

猫のアンラッキー7

 猫には九つの命がある。


 このことは、猫のみんなはよく知っているはずだ。人間たちの間でさえ、ずいぶんと知られるようになった。

 きみたちはまだ一つめの命だから、こうして私の講義を受けている。


 ほら、そこ! 七列めの猫、居眠りするんじゃない。


 しかしだ。いくら九つあるからといって命を粗末にしてはならない。

「まだ一つめなんだから、まあいいや」とか、「あとまだ幾つも残っているし、どうせうまくいかないんなら、ここでやめておこう」とか、「次、頑張るから」とか考えてはならない。猫にはあるまじき考えだ。

 そう考えるのは一部の人間のみ。それゆえ、人間たちは命を一つしか与えられなかった。とはいえ例外も多々あるのだが。

 勿論、猫にも人間たちとは逆の例外がある。一つでも粗末にすれば、残りの命を取り上げられてしまうのだ。


 七列め! 聞いているのか。今、先生が言ったことを繰り返してみなさい。

 そうだ、その通りだ。人間にも例外があるように、猫にも例外があるということだ。

 きみはどうやら二つめの命のようだが…… ふむ、学籍番号を見ると留年したようだね。ならば、アンラッキー7には注意するんだぞ。

 

 アンラッキー7は、猫の命が七つめに来たときのジンクスだ。

 三分の二が過ぎて、七つまで来るとそろそろ疲れも出るし、気も緩む。それにあとまだ二つ残っているからと気を抜きやすい。

 九つの命を使い切れなかった猫の内、実に77%が七つめに失敗している。

 

 さて、九つ全ての命をまっとうするために最重要なことは、人間を利用することだ。

 世界は危険に満ちている。

 人間を下僕化し、その家に入り込み、かしずかせるのだ。

 適当な下僕が見つからないときは、NNN《ねこねこネットワーク》に連絡するのも一つの手だ。下僕化しやすい人間を手配してくれるだろう。


 ここで15分の休憩を入れる。

 その後は、安全な下僕と危険な人間の見分け方だ。

 心して聞くように。


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