七つの扉

榮織タスク

その中にひとつ、入ってはいけない扉があります

 目の前には、七つの扉。

 六つはそれぞれ空いており、一つだけ閉まっている。どうやら一人だけ出遅れてしまったようだ。

 扉の上に書かれた文言が、恐ろしい。


『この中にひとつだけ、外れの扉があります。外れの扉に入った方は、生きてこの場所を出ることは出来ないでしょう』


 空いているのは六つの扉。上の言葉を信用するなら、自分は七番目にこの場所に来たということだろうか。

 折角だからと空いている扉の奥をそれぞれ見てみるが、薄暗くてよく分からない。わずかに見える床の辺りには、血の痕とか仕掛けのようなものは見えない。

 閉められている扉に視線をやる。事前に抜けていった六人は、無事なのだろうか。もしも無事だったのだとしたら、あの閉じた扉こそが外れということになる。

 血の痕は見えなかったが、そもそも見える範囲に仕掛けがあるとも限らない。

 結局のところ、情報が少なすぎるのだ。


「確率は7分の1。前に行った誰かが外れを引いた可能性もある」


 さしづめラッキー7ならぬ、アンラッキー7か。

 考えた末に、選ぶ。閉じられた扉を。

 ドアノブに手をかけて、ゆっくりと引く。やはり薄暗い部屋の中に、一歩足を踏み入れる。

 そこには。


「そんな、なんで!」


 一面の赤。夥しいほどの流血と、暴力の痕。

 死角から、手を掴まれる。逃げようと考える間もなく、中へと引きずり込まれる。


「やめろ、やめて、いやだ! いやだ!」

「不思議ダヨナ。アアヤッテ他ヲ開ケテオクト、誰モガ自分ガ遅レテキタト考エルラシイ」

「そんな!? じゃ、じゃあ――」

「ココヲ選バナケレバ、無事ニ帰レタンダヨ?」

「畜生! この野郎!」

「残念デシタ」


 機械の音と、おぞましい笑い声が響く。

 怒声と罵声も、程なく悲鳴に塗り替えられていく。

 静寂を汚されることを嫌ったのだろうか。ギイと音を立てて、扉のひとつが自動的に閉まった。

 静けさが戻る。

 しばらくすると、再び近づいてくる足音が――

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