7回笑うと?

リート

第1話 笑った後の世界

「アバラバババァァ!!!」


 南の果てにとある国がある。その国には、7回笑うと無の世界に行けるという伝説があった。


「アバラバババァァ!!!」


 伝説によると、無の世界とは文字通り何もかもが無となる、現実と精神の狭間にある世界のことを言うそうだ。


「アバラバババァァ!!!」


 今笑っているこの男。友人との賭けに負けた彼は、罰ゲームとして誰も信じていない伝説を、本当だと証明しなければならなくなった。


「アバラバババァァ!!!」


 建物の屋上からドスの効いた声が町中に響き渡る。彼の隣には、賭けに勝利した友人の姿があった。


「アッシャッシャッシャッシャァ!! 頑張れよぉ~」


 さっきから隣の友人は陽気に笑っている。笑った回数はすでに5回を超えている。男は、絶賛罰ゲーム中なので友人に声をかけることができないでいた。


「アバラバババァァ!!!」


「アッシャッシャッシャッシャァ!! あぁおかしぃ。笑いが止まらんよぉアッシャッシャッシャッシャァ!!!」


 その時だった。突然、友人の背後から何者かが現れた。その者は、背中にボロボロの翼を宿し、目はクリっとしていて、胴短長足であった。


 その者は、どことなく悲しげな表情をしていた。ボロボロの翼を宿した者が、ゆっくりと話し出す。


「7。それは、神が6日間で世界を創生した後、7日目を休息日としたことから、私が聖なる文字として世の中に広めた。つまり、7という数字は創生の文字なのだ」


 この者の存在には、誰一人として気が付いていない。なぜなら、呼吸をしていないからだ。


「さぁ。私と共にユこう」


 その者は、ゆっくりと友人に覆い被さっていく。直後、男は


「アバラバババァァ!!!」


 6回目の笑い声を町中に響かせた。がしかし、笑った直後の男の視界には友人の姿はなかった。


「あれ? おぉぉいネゾント~! どこに行った~! 退屈でもう帰っちまったのか~!」


 ここに、伝説は立証された。

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