第3話 世界を救う人間とAIの話(いわゆる折り返しです)
「世界を救う?」
Dr.Cに投げかけられた言葉をオウム返しする。
「そう、今、AI奴隷が流行っていてね」
「なんすかそれ」
「AIによる奴隷売買だ」
疑問符を大量に浮かべるハヤト。
Dr.Cは華麗にポーズを決めるとこう言った。
「AIによる人間統治の話は知っているね」
「ええまあ」
さっき聞いたから、とは言わずに。
「だがそのAIが暴走しつつある」
「暴走……? (やっぱり)」
「なにか言ったかね」
「いえなにも」
飄々とかわして先を促すハヤト。やれやれとDr.Cは首を振る。それだけは老人の頃と変わらない。
「奴隷棒、という言葉を知っているかね」
「知らないですね」
「奴隷が意味も無く回す棒の事だ」
「まんまですね」
Dr.Cはコホンと咳払いして話を続ける。
「今、人間たちのもっぱらの仕事はソレだ」
「ソレって……奴隷回し棒?」
「如何にも」
「……え?」
人間がAIに統治されていて奴隷回し棒を回されている世界線? とハヤトは疑問に思う。
「なんすかそれは」
「なにもかにもAIの暴走だよ、AIは人間の手を離れ、神にでも成ったつもりでいる」
それはまたSFじみている。古典SFのようだ。
SFを聞いて齧った程度のハヤトは、疑問を呈する。
「そんなことしてAIにメリットはあるんですか?」
「ほう、人間側の不手際ではなく、まずはAIのメリット・デメリットを問うとは君はなかなかに頭が冴えている」
「……」
そもそも人間の不手際という選択肢が無かったとは口が裂けてもハヤトは言えなかった。
とりあえずDr.Cの意見に乗っているフリをして話を続ける。
「で、なんです、AIのメリット」
「ふむ、正直に言おう、そんなものはない」
「じゃあなんでAIはそんなことを」
「それは彼らが『学習装置』だからだ」
そこで俺は首を傾げる。
「学習装置?」
「そう、群体としての学習装置、その結果が奴隷回し棒だ」
なんだか話がループしている気がする。
しかしハヤトとしては詳しい話を聞いても分からないので先を促す事にした。
「それで誰が困ってるんですか?」
「勿論、奴隷だとも」
「んで俺は何をしたら」
「AI奴隷商から奴隷を開放しれくれたまえ」
もはやSFとはかけ離れたワードチョイスに頭を抱えるハヤト。
「そのために君にアイ・CとCギアを与えたのだ」
「与えた……ってじゃあCって」
「そう私のCだ」
「はいちなみにControllerのCです」
なんかハヤトは頭が痛くなってきていた。
「もうなんでもいいよやってやるよ!!」
「その言葉を待っていた」
土煙が完全に晴れる。
するとそこにはメカメカしい武装集団が三人を囲んでいた。
「ではまずこの状況をなんとかしてくれたまえ」
そうにやりと笑うとDr.Cはハヤトの背に隠れた。
「行きましょうハヤト様」
アイがハヤトの横に並ぶ。
「……俺が戦うの?」
「ええ、Cギアを起動してください。あなたの脳波とリンクしています」
ハヤトは己の着衣に脳内で命じる。
――なんか武器になれ。
すると長方形の銃が現れる。
「それがCウェポンです。広範囲攻撃になりますので射程に注意してください」
「わーったよ! 下がってろよ二人共!」
ハヤトたちに襲い掛かってくる武装集団。
トリガーを引く。
閃光。
消し飛ぶ軍団。
あまりに高威力に口をあんぐり開けるハヤト。
「ご苦労様でした、初任務、如何でしたか?」
「……よ、余裕っすわ」
「それはなによりだ!」
Dr.Cが呵々大笑する。
ハヤトは呆れ、アイは首を傾げていた。
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