第2話 これはいわゆる異世界転生ってやつなのでは(違います)


 目を覚ますとそこには。

「うわぁ!? はぁ……はぁ……あれ? 身体……ある……身体ある! 身体ある!」

「おはようございます、ハヤト様」

「うおわぁ!?」

 そこには小首を傾げる銀髪碧眼の美少女メイドが一人。

「な、ん、だ、誰?」

「申し遅れました。私はアイ・Cと申します」

「アイ・シー……? 此処どこ」

「人体再生装置の設置場所です」

 人体再生装置、つまりは。

「未来キター!?」

「はい、ようこそ2023年からいらっしゃいました。2223年はあなたを歓迎します」

 ざっと二百年が経っている事に驚くハヤト。

「なんか俺の服装も……未来的っていうか……」

「はい、Cギア、あなた様だけに許可された特別仕様です」

「Cギア……なんかカッケー!!」

 終始こんな調子ではしゃいでいたハヤトだったが。

 そこで四角い何もない部屋を見渡して気づく。

「出口、どこ」

「はい、今、開きます」

 ぶわっ!

 勢いよく空気が入り込んでくる。その烈風に飛ばされ壁に激突するハヤトとスカート一つも靡かせないアイ。

「なんか理不尽じゃない!?」

「いいえハヤト様、ここは。当然の物理法則かと」

 ――は?

 と言う前に落下が始まった。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「ハヤト様、ハヤト様」

「なになになに今喋ったら舌噛むってぇぇぇ」

「着地姿勢を取ってください、死にますよ」

 その言葉がハヤトの耳の奥に届いたのは着地五秒前の事だった。轟音が鳴り響く。地面からの土煙で辺りが見えない。ハヤトはなんとか身体を動かすとアイを探した。

「アイ……さん? くっそ耳鳴りがひでぇ……」

「はい私は此処にいます」

「うおぁ!?」

「先ほどからよく『う』から会話を始めますが、昔の文化でしょうか?」

「イイエ、チガイマス」

 ただびっくりしてるだけとかハヤトには恥ずかしくて言えなかった。

「それにしても此処どこだよ……? 土煙でなんも見えねぇ」

「此処はセントラルシティ中央部のグリーンパークです」

「セン……グリ……え? 日本じゃないの?」

「現在、世界に国境は無く、AIによる人類統治が行われています」

 ――それっていわゆるターミネーターのバッドエンド世界なのでは?

 ――スカイネットに支配されているのでは?

 そんな疑問を呈そうものならば殺されるかもしれないと思い口を噤む。

「どうかされましたか?」

「いや……そうか……世界は平和になったんだな……」

「ええ、とても平和ですよ、あなたに紹介したい人がいるんです」

「え?」

 そこに居たのは白衣の女性だった。

 土煙を払いのけ颯爽と現れた出来る女風のお人。

「あなたはいったい……」

「人は私をこう呼ぶDr.Cと!」

「???」

 ドクター・シー。

 それは車椅子の老人の姿をしていたはずだ。それが、なに。白衣の美女に?

「君の蘇生について研究していた時に出来た副産物だよ。身体の二次創作、どうだいよく出来ているだろう? TSFと言えば君には分かりやすいかな」

 フィクションが今まさに現実と化している状況でTSFとか言われても驚きしか来ない。

「あんた二百年前の人間のはずだろ……?」

「これもコールドスリープの応用だ」

 なんでもアリかコールドスリープとハヤトは辟易した。

「んでまたなんでドクターが此処に?」

「君を待っていたに決まっているじゃないかハヤトくん」

「俺を? なんで」

「君には世界を救ってもらいたい」

 唐突に投げかけられた言葉に。

 ハヤトは絶句した。

 ――何言ってんだこいつ。

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