荒木奈々は不運じゃないっ!

和辻義一

荒木奈々は不運じゃないっ!

 最初に言っておく。私は絶対に不運じゃないっ!


 誰が最初に呼び始めたんだか、私に付けられた陰の渾名あだなは「アンラッキーセブン」。


 私の名前の「あら奈々なな」ってのが語源らしいんだけれども、こんなふざけたあだ名を付けた奴は、見つけ次第に「処す」――って、もうずっとかの昔に付けられた渾名だから、今更文句を言ったところで仕方が無いんだけれどもね。それに今となってはこの渾名も、その由来を知っている親しい友達から時々冷やかされる程度のものだし。


 まあ、私は高校受験にも失敗したし、大学受験にも失敗した。就職活動だって、正直めちゃくちゃ苦戦したわよ。一見したら私の人生、不運の連続って言われかねない感じ。それに、自分で言うのは忌々しいんだけれども、私は少々そそっかしくて、つまんないところでミスをすることが多い。


 高校受験ではマークシートの記入欄を途中から見誤っていたし、大学受験では電車を乗り違えて少々遅刻し、試験官さんのお目こぼしで何とか受験をさせてもらった。就職活動の時には分相応の会社を選んだつもりが、気がつくとうっかり良く似た紛らわしい名前の別の会社(実は結構レベルが高かった)に応募しちゃっていて、よくもまあエントリーシートが通ったものだと自分でも思ったわ。


 でもね、高校受験も大学受験も補欠合格で希望の学校に行けたし、就職活動だって敗者復活戦だったけれども、何とかシートをゲットしたんだから。これが幸運で無くって何だって言うのよ。結果オーライ、終わりよければすべてよしっ!


 ただ、男運についてだけは、正直アンラッキーかも知れない。中学生の時には当時好きだった男の子を、あろうことか親友だと思っていた女にまんまと横取りされ、高校生の時にはなんか色々と勘違いをした「自称イケメン」にストーカーされた――まあ確かに、見た目だけは決して悪くもなかったんだけれども、あの時にはあんまりにも迷惑極まりなかったから、大勢の生徒達の目の前で盛大に振ってやったわよ。あれはあれで、スカッとしたけれどもなー。


 で、大学生の時には電車の中で痴漢に遭うわ、不首尾に終わった合コンからの帰り道で、コートの下はすっぽんぽんだった変なおっさんに出くわすわ。どっちもぼっこぼこにしたうえで、きっちり警察へ突き出してやったけれども。ざまぁ。


 あと、就職してからだって、役員のおっさんの一人が何かにつけてねちっこく、ずーっと私へ声を掛け続けてくるし――こっちはさすがに手を上げる訳にもいかず、苦戦の日々が続いている。セクハラで訴えて勝つ良い方法、誰か教えてくれないかな?


 とはいえ、今のところは概ね自分の人生について、不満はないつもり。ただ一点、秘書課に配属されちゃったものだから周りは女の人ばっかりで、なかなかいい男に巡り会えないってことだけを除けば――。


 念のためもう一回言っておくけれども、私は決して不運じゃないんだからねっ!


 あ、あと三十歳ぐらいまでの彼氏候補いいおとこを現在募集中だから。優良案件があったら、紹介ヨロシクっ!

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