パーティーは呪われたアイテムを入手しました

呂兎来 弥欷助(呂彪 弥欷助)

第1話

 この世には、7つ集めるとラッキーなことが連続して起こるアイテムと、その逆の効果を持つ7つのアイテムがある。

 通称『アンラッキー7』。

 ひとつひとつのアイテムだけでも呪いがかかっていると噂されていて、7つ集まってしまうと、それはそれは恐怖の出来事が連続して起こるという。


 そして、その『アンラッキー7』の内いくつかをすでに持っている者たちがここにいる。

 魔物が落として行ったアイテムを囲い、眺めている。


「あくまでも、『噂』でしょ?」

 青いマントを纏う女勇者は、ほんわりと言う。

「まぁ、確かに。確証はないな」

 リアリストな武闘家は、鍛えられた両腕を組み無表情で答える。

「あ~、ふたりとも、非現実的なことは信じないタイプだっけ?」

 珍しく、チャラい魔法使いだけが触覚のような銀の前髪を揺らしてたじろぐ。


 くるり、と女勇者と武闘家が同時に魔法使いを見た。

「根拠も信憑性もないものを信じるのか?」

「真っ先に信じなさそうなのに」


 青空のもと、一羽のカラスが鳴いた。


「ほ、ほら! カラスが鳴いたよ! 不吉じゃん!」

 緑色の法衣をバサリと広げ、魔法使いは右腕を高く上げる。


 けれど、彼の懸命なアピールも効果は0のようで、武闘家の表情に変化はなく、女勇者はポカンとして首を傾げる。


「そもそもさ、どーして『呪いのアイテム』ってわかってるのに、今まで拾ってきたの? 要らないよね? 使わないよね?」

「使わないけど……こうして魔物が落として行ったり、宝箱を開けて入っていたら……もったいないし?」

「いやいやいやいや、『もったいないし?』じゃないでしょ! 『恐怖の出来事が連続して起こる』方が悪夢じゃない?」

「って、言ってもなぁ……。俺にとったら、もう何も怖いものなんてないっていうか」

「むしろ、何でも来いっていうか?」

「どーして無関心と楽しそうに言ってんの!」

 魔法使いが天を仰ぐように見上げた瞬間、

「あ」

 と、武闘家が声をもらす。


 ふと、魔法使いが視線を戻すと、女勇者は魔物が落として行ったアイテムを拾っていた。


【パーティーは呪われたアイテムを入手しました】


「わぁぁぁああ! 何コレ、こんなテロップ要らないよ!」

「まぁ、落ち着けよ」

 武闘家が魔法使いに声をかけるも、『落ち着けるか!』と魔法使いは返す。そして、

「でもさ、『7不思議』とかって7つ以上噂されていたりするじゃん? だから、案外、『アンラッキー7』も7つ以上あるのかもしれないよ?」

「確かに」

 女勇者の発言に武闘家が一理あると賛同する。だが、魔法使いは、

「いや、でもさ……それでも7つ集まったら同じなんじゃない? 『全部集めたら』っていう条件じゃないし……」

 と言いつつ、半ば諦め気味に肩を落とす。

「まぁまぁ。これで6つだろ? また見つけたら止めればいいんじゃないか?」

「え~、かわいかったり、キレイだったりするのになぁ……むしろ、7つ集めたら何が起こるかってワクワクするかも!」

「一番弱いヤツがワクワクするな。なぁ?」

 女勇者にツッコミを入れた武闘家が魔法使いに同意を求めて見ると、魔法使いは意気消沈とした様子で口を開いた。

「ああ……うん、そうだね……」

 あまりの元気のなさに『どうしたの?』と女勇者は声をかけるが、『何でもない』と魔法使いは告げる。

 武闘家が魔法使いの背を叩き元気づけようとしたが、しばらく魔法使いは気を落としたままだった。


 彼には言えない秘密があった。


『アンラッキー7』のアイテムのうち、ふたりの知らないひとつのアイテムがすでに彼の手の中にある。


 彼らが恐怖の出来事を連続して体験するのは、また別のお話。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

パーティーは呪われたアイテムを入手しました 呂兎来 弥欷助(呂彪 弥欷助) @mikiske-n

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ