大事な場面で出ると割と絶望的な数字
下垣
人生を賭けたギャンブル
「さあ、やってまいりました。本日も全財産を賭けたハイアンドロー! 挑戦者の財産は現在300万円。借金額は……なんと1億円だ! ルールは簡単。基本的にベット金額は全額。ハイアンドローに勝てば、2倍! 負ければ財産を没収。実にシンプルなルールです!」
背中がざわ・・ざわ・・してきた。今日で俺の人生が決まる。友人に騙されて負わされた借金1億円。それを返すには勝つしかない!
「それでは、第1ゲームスタート! 最初の数字は「3」です! さあ挑戦者。コールを! ハイアンドロー!」
よし、いきなりついている。3ならハイに賭ければ2が出ない限りは勝ちだ。
「ハイだ!」
「次の数字は……「4」です! おめでとう! 所持金が600万円になりました」
まあ。順調だ。そして、次の数字は「4」か。これもまあまあいい数字だ。
「さあ、次の数字は「4」より、上か下か。ハイアンドロー!」
「当然、ハイだ!」
「次の数字は……おお! 「A」が出ました。ジョーカーは含まれてませんので、Aが最大の数字です。これで1200万円です。いいですね順調ですね」
ヨシ! Aなら次はローに賭ければ勝ち確定だ。Aが出ても引き分けでAで再挑戦できる。実質2400万円が手に入ったようなものだ。
「では、挑戦者。次の数字をどうぞ」
「当然、ローだ」
「次の数字は……Kです。これで2400万円です!」
よし、KはAの次に強い数字だ。ローに賭ければAが出ない限りは勝てる! いいぞ! 順調すぎて怖いくらいだ。
「Kの次はどっちでしょう。コールをお願いします」
「そんなもん決まってる。ロー以外に賭けるやつはいねえだろ」
「ええ。それでは……次の数字は4です! おめでとうございます。4800万円です!」
4800万円。たった数回のハイアンドローをクリアするだけでこれだけの額を稼いでしまうとは……まさに破格と言ったところか。
「それでは、挑戦者。4の次の数字は……ハイアンドローをどうぞ」
4より下は、2と3しかない。だから、ここはハイで良い。
「ハイだ!」
「では、行きます。7です! 当たっているので9600万円ですね」
ぐっ……! バカな……! この局面で7だと……! いや、2や3じゃなかっただけマシと言うべきだが……ここで7は辛い!
「挑戦者、ここで9600万円を稼ぎました。借金額の1億円に届かないものの、十分すぎるでしょう。ここでドロップしても良いんですよ」
ここでドロップ……! 賢明……! それが賢明……! しかし、次のハイアンドロー。勝てば1億9200万円! 借金返しても9200万円のお釣りがくる! だが……! だが……! 7だぞ……! ハイの方が確率は高い。しかし、2、3、4、5,6……! この5人の伏兵! その存在は決して無視できるものではない……!
「さあ、ドロップ or コール!」
そ、それに9600万円を手にしても……借金! 400万円の借金が残る。1億にくらべたら低すぎて感覚がマヒしがちだが……! たけえだろ……! 400万円は……! しかも利子というおまけつき……! 実にバカらしい。
「あ……あ……」
「どうしました? 挑戦者様?」
10万、20万のギャンブルだったら、ここでハイを宣告していた……でも、無理だ。元手300万を失うリスク……! 無理だろ!
「ハロー!」
「はい?」
「だから、ハローだよ! ハロー!」
「いや、ハイなのかローなのかどっちかにしてくれませんか? なんか挨拶みたいになってるんですけど」
「ここは引き分けで手を打たないか?」
「はあ、引き分けとは……?」
「俺はここで勝てば9600万円の利益を得る。しかし、それは同時に運営が追加で9600万円失うということ……!」
「そうですね」
「だから……その半分! その4800万円! それを足して1億4400万円! 俺はそれで十分だ。それ以上は望まない。だから、このゲームはそれで手打ちということで」
「は?」
「あ、いや。1/4の2400万円でいい! いや、1/8でも大丈夫だ! 1/16でもいいぞ!」
「……うるせえ! いいからさっさとコールしろぉおぉぉぉおお!」
「は、ハイイイイ」
「ハイ。そう、宣言しましたね?」
「あ、いや、ちがっ……今のは、返事をしただけで……」
「では、次の数字を確認しましょう……」
ざわ・・ざわ・・
「8……! バ、バカな! 8だと……!」
「え……か、勝ったっ……! 勝ったんだあああああいえええええい! うぐ……」
「え……? ちょ、救護班! 救護班!」
「ダメです。亡くなってます」
「あー。興奮のあまり逝ってしまったか。まあ、高額のギャンブルに勝った人がたまに発作で死ぬこともあるし、まあ……死んじゃったし、賞金は没収ですね。HAHAHA」
大事な場面で出ると割と絶望的な数字 下垣 @vasita
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