第8話、「戦蘭の花師]]

 ローザスは言われた通り荷物を持って寮を出た...。が、彼女の事を結局引きずっているのが身に染みて分かった...頭冷やす為に少し寝て、そこから持ち込みに持ち込んだ荷物の整理で、既に昼は過ぎてしまっている...。明日の朝、日の出まではあと15時間......そんなにあれば!荷物投げ捨て、工具箱片手に走り出した。

がんっ!

「アルキス!」

そう叫んでガレージに入る....が返ってくるのは無機質なコンクリの響く叫びだけ。

「うそだろ?早すぎる!」

「そんな早いかしら?]]

 声がした...気がした。少し辺りを見回すも、その声の主は見当たらない......。今思えば、戦地入りは明日の朝...つまり今日の昼には出発やら、準備やら、行動してるのが妥当だ...花瓶も無しに始められるのか? という単純な話だ...。来た道を戻ると、

ぶろろろろろろ......

 軍事車輛それもバスのような人員を運ぶような代物の...が多数、轟音立てて門を出るのが、窓から見えた...。ミサイルを装備した車を引っ張る車輛や、大型の長距離砲のようなものが付属のもある...あれらも彼女アルキスと同じく試作兵器の一つ。

「.........!終わった.....終わっちゃったよ?」

「何が終わったって?]]

 振り返る......振り返るもやはり虚構。体感、凄まじく早く沈む太陽の紅い光が廊下の中を照らす......。同じく彼の心も沈み始めて行った......幻聴が聞こえる程に、ジワジワと疲れていた。疲れなんて関係なくパニックになっただけかもしれないが...彼のみぞ知るだろう。

「ああああ......、」

 そう意味もなく、声をはっすとノスリ、ノスリ...と、頼りなく...荷物をぶん投げた寮へと戻る。誰が纏めたのか、扉の横に荷物が重ねられていた。

「.........、」

「黙って何してんのよ...追いかければいいじゃないの]]

「......くそ! 黙ってくれ! もう居ないんだろ...!」

「あっそ...お熱も冷めちゃった訳ね、期待して損した〜]]

 通り過ぎようとするその声の主.........


......通り過ぎようとする声の主?


「ッ!? なんで!?」

 現れたのは銀の髪に途中で金に変わる特徴的なウルフカットの少女...いや、少女を模した機械人形...。

「戻ってきたのよ? それぐらいわかりんさい...、キャンセルよキャンセル...! 頼んだらい〜よ〜ってね...!]]

「.........、嘘だろ......こんな事あるはずないって......!」

「私もびっくりしたわ? ディレオン...だっけ? が頑張ってくれたのよ...。で...どうなの?]]

「どうなのって?」

「機械を愛せる、尊敬する存在にはなれるかしら?]]

「............ッ!」

ポタ...とカーペットに落ちる一滴の雫。それが溢れる源泉は、目と言われた光を求める場。次から次へとこぼれるそれを無理やり抑え込み.........

「僕は...、僕が......! なっても良いんですか? 出会って全く月日も経たずになのに! そんな...、そんな......尊敬する存在になってもいいのか? ...良いんですか?」

「急に最後敬語なんて...私が鬼みたいじゃないの? .........ばか。じゃ、行きましょう...、そこで今日分の”手入れ”をやってもらうわ...]]

「それは勿論...でどこに?」

「あんたがエスコートしなさいよ...プロポーズ成功なんだから...あんたが連れていきなさい!]]

と、渡されたのは住所の書いた紙と鍵。

「エスコートって.........、ははは...うん! 行こう......、」

 2人は荷物と希望を持って....施設を出た。その日が終わり、日付けが変わる頃には、深い深い森の中の別荘に辿りついた...。着いてから、広いリビングのソファにローザスは座り込む。彼女は、手入れの前にちょっと着替えてくるワね...と言って自室に入って行った。ローザスは、どうせドッキリでも考えて出てこないんだろ...痺れ切らしてあっちから出てくるまで、そんな手には乗らないよ...と後になって赤く腫れてきた目を閉じた。


 部屋の中で、独り彼女は...

全感共有フィールリンク...終了。これで良かった......、.........]}

 そう言うと...突如ウルフカットのその短めだった髪が肩まで伸び、ゆっくり自身の下腹部に手を当てた...。窓から入った月明かりが、沈みゆく月を見つめたその顔を照らした。


 ぶろろろろろろろろろ......

荒野を真っ直ぐ走るトラック達。

「いいのよ...、これでね......]]

「終わったか......」

「何度も言わせないでまし? 私はもう1回ドッキリ仕掛けるのよ? 盛大なネタばらし用意してね! その時はあんたも来るのよ? バカみたいなパーティ帽被ってね!]]

「ああ、そうしよう......腰抜かすだろう、ハッハッハ」

じじじじーじー!

ヒバナが散るような電子音...

『じじじっ......敵襲! こちら技術試験隊所属3番輸送車! 敵襲を受けています!』

「こちら1番輸送車...長官のディレオン・ダンだ、了解...、しっかり活かしてやれ...健闘を祈る!」

『了解! 貴殿らにも! 国にも! 栄光あ──じじじじー...」

ちゅいん!ドゴーン!

『ディレオン隊長! こちらもです!』

『まだ日も昇ってねぇのに...、相手さん早起きだねぇ...。』

気が沈んでいた他の乗組員も少し賑やかになってくる。

「もう戦闘だぞ? そんな事言ってる場合かね....」

「ふふふ、人の事言えないわよ...さて、暴れますか!]]

「はっはっは......そうだな...戦果を上げるのは生粋の機械人形か、私達の機械装甲カラクリアーマーか! 人間様だって凄いってところ教えてやるぞ? アルキス君」

「そりゃしっかり見せて頂戴!]]

アルキスが白ベースの近未来的な衣装に制服を変化、瞬く間に変身すると...

「さぁ行こうか!」

後ろのドアから乗組員達は飛び降りた。運転手ドライバーは...

『ご無事で!』

と無線に残した3秒後...燃えるような鉄塊にぶち抜かれて吹き飛んだ。

荒野にまばらに散らばった失敗作達...。味方陣営後方から超長距離大型電磁徹甲弾砲レールキャノンイカヅチの唸りが聴こえ、それを合図に...

「野郎共!気張きばって逝きなさい!!!]]

失敗作、無機物、だが確かに命あるその美しい戦士一輪の蘭は飛び込んで行った。


「あ、ディレオン長官? ...行く前にやっておく事があるのよ、......え? 何って? ちょっと待ってなさい......、これ.........うん、驚くのも無理ないワね? NBr......、ニューバイオリアクターのリアルレプリカ......そうよ禁じられた技術。いくら条約前の触媒だからって私に使ってるのもオカシイ話よね? .........なんも言い返せないワね? ばれたらもうとんでもないですものね? ......でも、もしかしたらラストかもしれない.........だから今更何やろうったってどうにでもなるわ! 言い訳は後で考えましょう......、あ~のばかにも付き合って貰うわ.........んでそう、スペアの二号機セカンドユニットがあるワよね? おんなじモデルの.........、まぁそうね髪の長さは違うけど.........、あの子......妹? でいいのかしら? はNBrが生産できなくなってしまったせいで......ここにいないわ。でもそれじゃあ作ったのに結果出せてない訳じゃない? .........そう、察しがいいワね......どっかのばかとは大違いね! ふふ......え? 笑ってないワよ! ......ほらやり行くわよ起動を! ......あ、二号機の中身も綺麗にしておかなきゃね.........せっかく整えてくれたんだから...ね、............なによ? 私は嫌いよ? あ~んな奴! 私みたいな子守りがいないとやっていけないだろうから送り付けてやるだけよ! ............ちょっと! なに笑ってんのよ! ............じゃ行くワよ? ............]]


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