第7話、「根締め]]

「で......、できた、本当に......、」

「あんたが驚いてどうすんのよ]]

NBr──ニューバイオリアクター...特殊触媒によって高エネルギー粒子を精製する、イチャモン漬けで禁じられた技術。

「今日は寝ましょう...]]

「まぁ...、そうだね....、」

ローザスは重いガレージの扉を開けると、伸びをしながら去っていった。


翌日、

「おはようございます、」

「そういえば...なんだけど]]

ドア開けて数秒も経たずに、アルキスに目の前でこう言われた...、というかずっと待っていたのだろうか...。

「なにさ、」

「.........うーん、いや...]]

「な、なんすか......、」

「あ〜、言うわ...、言いますとも....]]

ゴクリ...

「別電源...作ったじゃない? ...なによ、ズコーってして......はぁ、やっぱ辞めるわ]]

「続けて続けて...、」

そんなリアクションを取ったが、何を期待していたのか...、ローザス本人もその時は分からなかった...。

「しょーがないワね......短絡って電気由来で起こるじゃない? で...NBrは高エネルギー粒子発生装置な訳よね?]]

「.........なるほど? それ以上は言わなくてもいい...、」

「気付いてたわけ?]]

「今まで電源付けたまま作業ができていたのはやっぱそういうことだろーなーって一応はね...、」

「あんたは、ゴン! を無くす為にこれを作ったって言ってるのよね? どうするのか知らないケド...これからは電源付けたままでも全然OKってことじゃないの? 作ったのいるのこれ?]]

「そう言われるとアレだけど...僕は頭を外して、僕の隣りに置いて助手も兼ねてもらおうかな〜と...、そうすれば君の頭ぶつける事も無いし...、」

ちょっと沈黙。ローザスは自身で言ってしまった事に気づく。

「やーっぱり、アンタ私の頭ぶつけてたんじゃないの...!]]

「げぇ!」

「嘘付きやがってぇ〜! 相棒バディなんだからそういうのは無しよ! というか、患者みたいモノな私に手術を手伝えは意味わかんないわ! いつも通りのやり方で、電源切らないでやりなさい!]]

「わわわ! ごめんなさいッ!!」

逃げるローザス、追うアルキス。少し滑稽な鬼ごっこが始まった....。が、

コンコン!

「!」「!]]

2人は固まると...アルキスは、残念ながら無駄になってしまったNBrを慌てて隠し、ローザスが急いでドアに向かう...。ほんのりデジャヴだが、3cmドアを開けると、

「はい! なんでありましょうか!」

『やぁやぁ! 元気そうじゃないか! イラ君』

紛れも無くディレオンだった。後ろを振り返ると、アルキスが親指を立てている、無事、隠し終えた様だ。

「ど、どうぞお入りください!」

「なんか緊張してるのかね? リラックスリラックス!」

深呼吸をしてみせるディレオンを真似てローザスも深呼吸。そこにアルキスが合流。

「で、何も不調は無いな諸君、こちらはスパイが出たみたいで忙しいのなんのでな...あんまり寝れていない。君たちの事だから...、手入れが終わったらさっさと帰って寝てるとは思うが...ん?」

「な、なんでしょ、」

「イラ君、心做こころなしかクマができている様な......」

「き、気のせいでありましょ! 薄暗いんでここ! ははは! 明るくしましょうよ!」

「私は暗い方がイイんだけどー......]]

「はーいそーっすよねー、」

「はっはっは..................でだ」

その一言でディレオンの語りの雰囲気ムードが一瞬にして下るのが分かった...、再びローザスは急に沸いた生唾をゴクリと飲み込む。

「先ず、アルキス君...戦闘だ。君の前線配備が決まった......明日の朝だ。......例のスパイの情報から察するに明日にでも敵国の大攻勢が始まるだろう」

心当たりがあったアルキスは黙って頷いたが...

「え?! そんな! 僕には何かできる事は.........いや、そんなもの最初っから決まってますね?」

一人納得行ってない者がいた...。

「イラ君、君は今からでも疎開しなさい...」

「なんでですか!? 僕は....花師なんでしょ!?」

「.......この計画はもう、枯れてしまうのだよ.......」

帽子で深々と普段から隠れている目をさらに深く隠すディレオン......

二人が賑やかしている裏で...閣下から下った命令は全試作兵器の実戦投入。戦争を動かす為にこうも長い時間潰してきたのだ、無理もない。本来動かそうとしていた兵器達は、相手側から動くのが分かった今、一掬いっきく失敗作なそれらは金食い虫。別の部署からすれば働かない"ニートな警察"も同義である。どこかで捨てねばならない......

「ともかくだ......君はもうここに居なくていい、本当に短い間だったが.........。君はいい青年なんだ...こんな人殺し業に沈む理由は無いよ」

「何をいまさらそんな綺麗事並べてるんだ!? 軍人なら戦地で死ねと言うんじゃないの!? それが誉だって! 頼みますよ! 言ってくださいよ!!」

「そっちこそ...何を今更、軍人気取って......。アンタ......ちょっとウザいワよ? 荷物纏めてゴーホーム...いつまで経っても物分かり悪いわね...機械でもわかるワ]]

「.........!? そんな事!!! 僕は......」

拳を握りしめるが......その行為は何の意味も為さない。

「うああああああ! 分かりましたよ! 出させてもらいます! 清々しました! よく考えればこんな爆薬塗れの危ないとこ、いてられますか!」

私物の工具箱を持って、頭に上った血の運ぶままにさっさと出て行ってしまった。


ガレージはてっきり静かになってしまった...。

「あーすっきり......彼女ごっこもこれでおしまいね!]]

「............ではこの時間、この場所に......」

何の変哲も無いメモ用紙に数字と集合場所を書かれて渡される。

「明日ぐらい...制服派手にしちゃってもいいわよね?]]

「あぁ......、構わないよ......こんな事本当に言いたくないが、しっかり棺を着飾って...」

「そんな冗談いらないわ、私が派手にするのはヒトの恐怖になる為よ...。産まれて来た理由もヒトの恐怖になるため......で、レディの部屋にいつまでいるの?]]

「あぁすまない...、じゃあ.........宜しく」

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