第6話、「あしらいその3]]

 上手く言いくるめて...聞こえない本来のカルミアに向けて、私に感謝しろ...とその旨の話を口に出し、持っていくもの持ち出したカルミア風アルキスだったが...。

 やはり....現実はそう甘く無い。大勢の兵士がカルミアの部屋を取り囲んでいるではないか...。

うわ~これだから人間ってめんどくっさいのよ.........

『カルミア殿! やはり聴取を行います!』


 少ししてガレージの中...

「これで......、」

こんこん......

『誰か居るか?私はカルミア、大将の者だ......。居るのなら返事をしろ。』

「げぇ!? なんでだ? まさか...」

小声で独り驚く

『保管所に怪しげな女の影を捕えたと連絡が来た。純白ウルフカットの女だ...このガレージは以前より怪しいと睨んでいる。』

「まじかよ、」

ローザスは目の前に有るものを隠すと...

「はい! こちらローザス・イラ第一試作技術班班長であります! そんなヒト知りません!」

ドアを3㎝だけ開けてそう言った。

『何を言うか無礼者。参る!!』

薄らと逆光に浮かぶその綺麗な金髪の女性はそう言うと、ドアをこじ開けようとする...

「ちょ、ま!」

慌てて押さえつけるローザスであったが......恐ろしい怪力で開けられてしまった!軽く吹っ飛んだローザス。

「ななななな...何も、ないですよ! 純白ウルフカットの生意気だけど、意外と中身良い奴なんて知りませんよぉぉぉ!!」

『生意気...そう、生意気ねぇ。』

「!?」

『驚かせてやろうと思えば...。」

カルミアと名乗るその女は次第に身長が縮み始め...

「まさか......、」

「そーんな事言っちゃうんだ~。」

そして髪色が先端を置いて段々とへと変貌....口元のほくろは薄くなっていき......。

「ああああああああああああああああああああああああああ、」

瞳の色は澄んだアッシュグレイ、着ている制服も身体からだの変化に合わせて収縮。

「ま、その後言った言葉だけに...許してあげてもいいわよ?]]

声に有った艶めきは減って...、聞き覚えのある声に......。

そうしてローザスは気絶した。


 ちょっと時間を遡ろう......


 やはり現実はそう甘く無い。大勢の兵士がカルミアの部屋を取り囲んでいるではないか...。

うわ~これだから人間ってめんどくっさいのよ.........

『カルミア殿! やはり聴取を行います!』

うげ~、めんど......ヤルカ.........

そう言った、この兵士達の班長にぬるりと近づき、耳元で滑らかに......

「では、10分だ・け......待ってくださります♡?]]

『......ど、どうぞ! であります!?』

そして再び、今度は膨らんだ胸をその班長に押し当て......

「ありがと、10分経ったらドアをノ・ッ・クして頂戴んね♡。]]

頬にキスを添えると......鍵を開け、直ぐ閉める。

「さーて...と、爪の睡眠機はもういいわね...。]]

ロッカーから寝ている彼女を引っ張り出し...、椅子に座らせ...首に刺さった爪を引き抜く。少しだけ血が集まり刺さっていた点が紅くなるが...引き抜く際に爪から噴出した薬剤で直ぐに止血された。彼女の言う”爪の睡眠機”とは、彼女の薬指の爪に搭載された小型のマイクロマシンで、突き刺した対象に電気信号を与え、一時的に仮死状態とすることができるひみつ道具だ。手刺さっている間ずっと効果は続く(流石に無限エネルギーではなく別の電池なので一週間が限界。)うえ、ちょっとだけ動く心臓の音も逆相の音波を当ててかき消し、体温も極限まで下がる為に、サーモでさえ感知はできない。仮死状態、つまり省エネで生かす事から、肉体老化もストップ! アンチエイジングにこれ一爪! ......さて、もういいだろう。手帳など、奪っ...借りたモノをあるべき場所へ返し、

「じゃ...さよなら、ワタシにハニートラップ紛いな事させたんだから......、大人しく罰を受けなさい......。あ、そうだ...このまま行ってちょっと驚かせてやろうっと♪。]]

 カルミア風アルキスは全ての窓を開けると、その窓から軽々しく飛び降りた。


 丁度キッチリ10分後、扉がコンコン...とノックされる。開いた窓から入った風に髪が棚引くだけだった彼女...カルミアは目を覚ます。

『ん...寝てしまったのかしら......。あ...入れ。』

『は、入れ? どうした急...にそんな口を!』

『え...?』

 知るはずもない。

『これから聴取だ! 立、立つんだ! この破廉恥サキュバス女! わ、私はそんな事されても甘くはせんぞ!』

『え? は? なんで? 巫山戯ふざけて居るのか!!』

『本性を現したな、取り押さえろ! なっ! 急に暴れ出した! 何かあるぞ! 間違いない!』

 ......。

 のちに、彼女が敵国のスパイだったという事が取り調べで判明。彼女は収監され、戦争中は檻より出る事を禁止された。

『なんでバレたのよ! くそっ......このままいけば、明後日あさってには私がこの国潰して、雇い国から英雄にされて、毎日ちやほや、遊んで暮らせるの確定だったのにぃ!!』

 彼女はそう一言叫び上げ、地下の深い深い闇の中へと連れ去られたのであった。


「サヨナラ助平スケベ体型ボディ......]]

「ん...、なんか言った......?」

 ローザスが何も無かったかの様に目覚める...

「な、に、も、.........で、アンタは何してたのよ......まさか暇してたんじゃないでしょうね!!]]

「ち、違う!......これだって、」

 奥にある箱から取り出したのは......

「何この箱...またここから箱が出てきたらぶん殴るわよ?]]

「なわけありますかい......それを作ってたんです、」

 銀色、無機質、ガラクタ感。こねくり回してもただの箱。

「殴る? 頭疲れてるんじゃない?]]

「あ、間違えた...こっち!」

 隣の箱からも箱を取り出すと......、がちゃ...と中が開く。

「リアクターのガワだよ......で、君は?」

「手ぶらなわけ無いでしょう...殴る?]]

 と、制服を脱ぐと......くり貫かれた背中。実は制服でごまかしてはいたが...背中のカバーを開けたまま盗みに行かせて貰っていたのだった。その中には...

「これだよ! ありがとうございます!!」

「ふん! もっと褒めてもいいんだからねっ...って! もう作業始めてるし......。しょうがないわ...自分で閉めるワ]]

 頭を掻くと、アルキスもドライバーを持ってやるべき事に取り掛かった......。


「これドライバー規格違うんだけど!]]

「いまいいとこ、」

「ワタシわかんないんだけど!]]

「がんばれ~、」

「おい]]

「はい!こちらです!」

 今日という今日はひと際賑やかに夜を迎えたのだった......。


 

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