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福朗

最強

「俺こそが全次元を認識し! 全てを消滅させ! 全ての攻撃が効かない永遠無限の化身! 最強無敵であり全知全能そのもの! 限定的な全知全能だのそれを証明する者が存在しないなどという、言葉遊びの入り込む余地なぞない! なぜなら俺はそういったものだからだ! そう! 全て全て全て全て! 全ての力を持つ者こそ俺だ!」


 ああもう面倒くさいですわね。あ、皆様お久しぶりですわ。レイチェルだのメアリーだの名前がいまいち定まっていない、絶世の美貌の持ち主であるこの私の世界へようこそ。


 買い物をして帰ってる最中に、金髪碧眼のムキムキ男。永遠無限で最強無敵の全知全能の全ての力を持つ全てさんに声を掛けられたのですが、これは新手のナンパと認識してよろしいのでしょうか?


 まあ面倒ですからさっさと終わらせましょう。


「では全てさん。日本という場所はご存じですか?」


「知っているとも。太陽系第三惑星地球に存在する島国だ」


「まあ! ファンタジー世界にいるのに日本をご存じだなんて、本当に全知全能なのですね!」


「当然だ」


 なんてことですの。この異世界にいながら地球のことを知っているとは、嘘偽りのない全知全能の最強存在に間違いありませんわ!


「では今現在、北海道でこの駄文を読んでいる方の隣に現れてくれませんか?」


「は?」


「は? じゃありませんよ。だから、北海道でこの駄文を読んでいる方の隣に現れてほしいのです。新潟でも構いませんわ」


「な、なにを言っている?」


「だ、か、ら。全知全能で全てを司っているような貴方様なら、異世界転移して日本の読者の方の隣に現れることなんて容易いでしょう?」


「ま、待て」


 全てさんが急におどおどし始めた。


「すみませんがもう一度自己紹介していただけませんか?」


「俺こそが」


 はい、物語改変。


「全次元を認識できず! 全てを消滅させることなど不可能! 全ての攻撃が効いてしまう一瞬有限の化身! 最弱全敗であり無知無能そのもの! 限定的な無知無能だのそれを証明する者が存在しないなどという、言葉遊びの入り込む余地なぞない! なぜなら俺はそういったものだからだ! そう! 全て全て全て全て! 全ての力を持たない者こそ俺だ! は?」


「どうしました? さっきと言っていることが違いますが。それともかっこの中が勝手に変えられましたか?」


「な、なにをした!?」


「それこそ全知全能なら分かるのでは?」


「なにをしたと聞いている!」


「ちょっと文字を変えただけですわ。結局のところ、貴方も、そして私も0と1のデータですのよ? パソコンの前の方々の隣に立つ。本になったら本を読んでいる方の隣にいる。それができないのに全知全能と言われても困ってしまいます」


「なにを言っているうううううううううううううう!」


「少なくとも、私の敵ではなかったということですわね。ではごきげんよう」


 物語改変。全てさんを消去。


 ああもう面倒くさいですわね。あ、皆様お久しぶりですわ。レイチェルだのメアリーだの名前がいまいち定まっていない、絶世の美貌の持ち主であるこの私の世界へようこそ。

 買い物をして帰ってる最中に、金髪碧眼のムキムキ男。永遠無限で最強無敵の全知全能の全ての力を持つ    に声を掛けられたのですが、これは新手のナンパと認識してよろしいのでしょうか?

 まあ面倒ですからさっさと終わらせましょう。

「では    。日本という場所はご存じですか? うん?」


 おっと。間違えて    がいないのに物語を進めてましたわ。


 では読者の皆さま。ごきげんよう。おほほほほほほほほほほほほ!

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