不幸体質持ちの俺、学年一の美少女に告白されるも、それはトラブルな日常への入り口でした

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

第1話

「拓斗さん……。私と付き合ってくれませんか?」


「……へ!?」


 唐突な告白に、俺は驚いて変な声を出してしまった。

 え?

 何言ってるのこの子!?


「な、なんで急に……」


「前から拓斗さんのことが好きだったんです! だから、今日思い切って告白しました!」


「そ、そうなんだ……」


 どうしよう。

 こんな可愛い子に告白されて嬉しくないわけがない。

 放課後に校舎の屋上へ呼び出されたときから、もしやとは思ってたけど。


「あの、返事は……?」


「ごめん、君の誕生日っていつ?」


「えっ、9月23日ですけど……」


「じゃあ大丈夫か……。出席番号は? 住所の番地は?」


「えっと、出席番号は26番で、家は3番地です」


「よし。それなら付き合おうか」


 俺がそう言うと、彼女はキョトンとした顔をする。

 そして数秒後、顔を赤らめて嬉しそうに言った。


「ほ、本当ですか!? やったー!」


「うおっ!」


 彼女がいきなり抱きついてきたので、俺はバランスを崩して尻もちをついた。

 そのまま彼女に押し倒される形になる。

 本来であれば、嬉し恥ずかしな展開だが――


「ぐおおっ! 痛ぇ!!」


 俺は背中の痛みに悲鳴を上げる。

 彼女を押しのけて立ち上がり、背中をさする。


「ご、ごめんなさい! 大丈夫ですか!?」


「だ、大丈夫……」


「それにしても、どうしてこんなところに石が……」


 彼女が首を傾げる。

 そこには絶妙な大きさの石が転がっていた。

 背中を打ち付けた際に最も痛みが大きくなりそうなサイズ感である。


 改めて言うが、ここは校舎の屋上だ。

 普通なら、こんな石が落ちているはずがなかった。

 俺はある疑念を抱く。


「1つ聞き忘れていた」


「え?」


「君の名前を聞いてなかったね」


「あ、そういえばそうですね。私の名前は、七々海 奈々香(ななななうみ ななか)です」


 彼女が自分の名前を口にすると、俺の疑念は確信へと変わった。


「オーマイガー……!」


 まさか、そんなことがあるなんて。

 俺は頭を抱えてしまう。


「ど、どうしたんですか?」


「悪いが、さっきの話はなかったことにしてくれ」


「ええーっ!? なんでですか!?」


「説明しても仕方のないことなんだ。では、俺はこれで――」


「ま、待ってくださーい!」


 帰ろうとする俺を、七々海さんが引き留めてくる。

 すると、次の瞬間――


「きゃあぁっ!?」


「うわっ!?」


 七々海さんは俺と共にバランスを崩し、転倒した。

 今度は背中に痛みが走ることはなかった。

 代わりに柔らかい感触が伝わってくる。

 彼女の胸が、俺の顔面に押し付けられていた。

 基本的に不幸体質な俺にとっては、珍しくご褒美なのだが……。


(それだけで済むわけがない……!)


 俺はすぐに起き上がる。

 七々海さんにもケガはなさそうだ。

 しかし――


「てめぇ! 今の見てたぞコラァ!!」


「学年のアイドル、ナナちゃんに何してんだぁ!!」


 屋上の入口から、男子生徒たちがぞろぞろと入ってきた。

 全員が怒りの表情を浮かべている。


「やはり、ただでは済まないか……。アンラッキー7と関わったばかりに……」


「え? どういうことですか? 拓斗さん」


「俺は7という数字に悪い縁があるんだよ。特に女絡みだと最悪でね」


「そ、そうなんですか……。だから誕生日や出席番号を聞いてたのですね」


「ああ。しかし、名前を見過ごしていた。七々海 奈々香さん……」


 俺は彼女を見つめる。

 読みを含めて、名前に7が3つも含まれる彼女。

 これまで以上の災難に見舞われる予感がする。


「大丈夫ですよ、拓斗さん! 私と一緒に乗り越えていきましょう!!」


「そうは言ってもな……。現に、こうしてトラブルが――」


 俺の言葉は遮られた。

 七々海さんの口によって。


「……へ?」


 突然のことに、理解が追いつかない。

 彼女は俺にキスをしたのだ。

 しかも、舌を絡ませてきた。


「んっ……」


 艶めかしい声を漏らす七々海さん。

 しばらくして、ようやく解放された。


「なななっ、何を!?」


「ファーストキスでした♡」


 頬を赤らめながら、嬉しそうな表情を浮かべる七々海さん。

 対する俺は放心状態だった。


「この野郎、見せつけやがって!」


「ぶっ殺してやる!!」


 男子生徒たちが一斉に襲いかかってくる。

 その矛先はもちろん俺だった。


「ちょ、ちょっと待てよ! 話せば分かるって――」


「問答無用だオラァ!」


「死ねぇぇぇぇっ!」


 血走った目をしながら、拳を振りかぶってくる男子生徒たち。

 絶体絶命のピンチである。

 こうして、俺がアンラッキー7に振り回される日々は続いていくのだった。

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