アカデミー賞の夜

九月ソナタ

アカデミー賞の夜

3月12日の夜、

友人宅に集まり、テレビでアカデミー賞の発表を見ている。

友達はみんな映画好きだからほとんどの候補作を観ていて、受賞者の下馬評をしている。

ヨシコはタイトルくらいは知っているが実はひとつも見ていなくて、みんな、どれだけ暇なのと内心思っている。


54歳のブレンダン・フレイザーが「ホエール」で主演男優賞を取った。

ヨシコだって、この俳優のことは知っている。

若い時、ミイラが出てくる冒険映画に出ていた。その頃はとてもかっこよいアイドル系で、オスカーにノミネートされるような役者ではなかった。

しかし今では顔も身体も2倍くらいに大きくなり、昔の面影はほとんどないが、長い不遇の時代が彼を名優にしたようだ。

初めてノミネートされて、初めての主演男優賞をゲットした。

諦めないで続けていたら、こういうこともあるんだね、おめでとう。


「リチャード・バートンは7回もノミネートされたのに、1度も取れになかった」

と映画通のボブが言った。


おっ、これって「アンラッキーセブンではないか」とヨシコは飛びついた。

1時間ほど前に、カクヨム20236のお題「アンラッキー7」が発表されたばかりだ。

なんてラッキーとヨシコは微笑む。


「アメリカって、セブンはラッキーナンバーだよね」と訊いてみた。

「そういうことでもなくて、鏡を壊すと、アンラッキ―が7年間続くんだよ」

「長いね、7年間は」


何でも知っているマーチンによると、古代ローマの神は、メタルの鏡を通して人の心を読んでいたので、それを壊したふとどき人間には、7年の罰を課したのだそうだ。

「なぜ、7年?」

「7年ごとに身体が新しくなると信じていたからだよ」

「7年で新しくなれたらいいのにね、人の心臓も」


「ホエール」は270kgの体重のゲイ男が、別れていた17歳の娘とつながる物語だそうだ。ヨシコは観ようという気になっている。彼の演技が見たい。






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