ラッキー7は、ラッキー7

大黒天半太

誰が何と言ったって

 それは、俺にとって、7番目に所属したパーティで、7度目の地下迷宮探索だった。


 人間生きていれば、間の悪い、巡り合わせの悪いタイミング、不運の連鎖を、如何いかんともしがたい状況は、現実にいくらでもある。


 験担げんかつぎと言われようと、そんな時、過去に運がよかった時と今の何か共通点を、ラッキーアイテムとかラッキーカラーとか言ってしまう、思ってしまうのは、ある種の気分・気持ち・モチベーションを立て直すためのテクニックとして、有効だと信じたい。

 でなければ、先に心の方が折れる。


 防衛反応でもいい。

 まだ、最悪の状況じゃない、運は尽きてない、逆転のチャンスは来る、と思えることで、思考の回転速度は、維持できる。

 考えられなくなったら、動きが止まったら、俺の命運は、そこで文字通り尽きるかも知れない。


 メンタルのスイッチを入れるきっかけとして、俺はまだ運に見放されてないと、確信できる何かがあればいい。



 7人パーティで地下迷宮に挑み、現れた人型魔物ゴブリンの一隊は、7匹まで倒した。

 逃げた残敵を追っていると、罠に嵌められ、落とし穴で下の階層に落ちた。仲間とはぐれて一人になったが、落ちた先は、行った経験のある7階層だ。

 ラッキーナンバーの7揃いは、続いている。

 俺の運は、まだ健在だ。



 7度目のピンチだ。正確に数えたわけでもないが、ラッキーナンバーだと乗り越えられそうな気がする。いや、むしろ、今が6回目で、乗り越えた先がラッキーナンバーの方がいいのか?

 次のピンチを待ってるわけでもないが、どうせアンラッキーは冒険者につきもので、待っていなくても来るのなら、ラッキーで乗り越えられる方がいい。


 この階層での単独行動は、リスクは高いが、不可能って程でもない。6階層から降りて来る仲間を、待てる位置まで移動だ。

 それまでは、できるだけ警戒して、複数行動の魔物との戦闘は避ける。単純に言えば、それだけの話だが、それがなかなかに至難の技だ。


 魔物と遭遇しないまま、落とされた7階層の位置から、6階層へ繋がる階段に辿り着いた。俺は、運がいい。


 その時、階段の上から仲間達の声がした。こちらから、声をかけようとしたが、その間もなく、仲間達が階段を駆け降りて来た。


 その仲間達の後を追って、魔物の群れが続く。その数、7匹。


 俺は、思った。これで、俺達パーティは、7人。


 俺は、本当に、運がいい。例え、負傷した仲間達を庇い、7匹の魔物を相手に大立回りを演じないといけないにしても。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ラッキー7は、ラッキー7 大黒天半太 @count_otacken

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ