化け猫と小さな不幸の七子ちゃん。

山岡咲美

化け猫と小さな不幸の七子ちゃん。

『ニャニャニャーーーー!!!!』


「あっ、ごめん猫ちゃん!!」



 七歳の時、猫の尻尾を踏んだ。


 もちろんわざとじゃない。


 でも、猫は私を怨んで呪いをかけた。


 猫は化け猫だった……。



***



「ねーいい加減にしてよ化け猫!!」


 私はトーストをホップアップトースターで焼きながら、ダイニングテーブルの下でカリカリ猫フードを食べる化け猫と話す。


『イヤニャ、我輩ニャニャ子の事、今でも怨んでるニャ』


 私、風向七子ふうこうななこは尻尾の二つある真っ白な太っちょ猫に取り憑かれていた。


「しつこい!! ちょっと尻尾一つふんだだけじゃん!」


『今日の第一不幸!』


「え、え、何、何???」



 ガシャン!!



 ポップアップトースターから食パンが「ガシャン!!」と天高く飛び出した。


「甘い! よんでた!!」


 私はホップアップトースターの故障を先読みして食パンをお皿で受け止める!!


『さすがニャ、ニャニャ子』


「ホント毎日毎日、要らんことしてーー!」


『尻尾ふまれたの怨みは強いのニャ』


「何が七かける七十七の呪いよ!!」


 尻尾をふまれた化け猫は私に、七十七歳になるまで毎日小さな不幸を七つ起こす呪いをかけたのだ。


『今日の第二不幸!!』


「え?! 何、今日は連チャン連チャンのパターンの日なの???」


 私は回りを見渡す……


「何よ、何も無いじゃない」


『ニャ』


「ホント呪い以外に嫌がらせとか止めてほしいわ」


 ────バターが無い。


「はあ……、まあイチゴジャムあるし……」


『今日の第三不幸!!!』


 ────イチゴジャムが無い。



「私のイチゴバタートーストがーーーーーーーーーー!!!!」



***



「ホント毎日毎日飽きもせず、私もう高校生だよ」


『あと六十年ニャ』


「うぐぐ……」


『ニャハハ』


 幸せのいっぱいの筈の十七歳が化け猫の尻尾踏んだせいで台無しだよ……



「あっ、七子ちゃーーん! おはようーーーー!」


「あっ、友子ともこちゃんおはよう」


「ニコネコちゃんもおはよう♪」


「化け猫で充分よ、こんなの!」


 友達の眼鏡神楽友子めがねかぐらともこちゃん、眼鏡の似合う三つ編み女の子。


 化け猫の二つの尻尾を見て、二個猫にこねことか呼んでる。



『今日の第四不幸!!!!』



「ねえ知ってる? 最近この辺りに引ったくりが現れたんだって、ほらバイクに乗ってバックとか走りながら取るやつ」


「化け猫! 全然小さく無いじゃん!!」


「どしたの七子ちゃん?」


「ううん、何でも無い」


『ニャニャ子、そっちは我輩じゃニャイニャ、こっちの方ニャ』


「あっ、七子ちゃん! スカートスカート!!」


「あっ!!」


 セーラー服のスカートのサイドファスナーが全開に開いてた……。



***



「はぁ、今日はもう四つも不幸ったよ……」


『まあ、気を落とすなニャ』


 私は姿を消して教室まで入り込んだ化け猫をにらみ『お前のせいでな』と心の中で思った。


『今日の第五不幸!!!!!』


「よっ七子、おはよう」


「あっ!! さわやか君♪♪」


 憧沢爽あこがれざわさわやか君♪ 私の大スキな人♪♪


「ん、なんだ七子、今日は寝癖凄いな!」


「え?!」


 私は身だしなみ用品の入ったポーチから手鏡を取り出し髪をチェックする。


「いや七子、後ろ後ろ」


「え?! 後ろ???」


 爽君は学ランのポケットから折り畳み式の鏡を取り出して私の手鏡と合わせ鏡をする。


「あっ!! 跳ねてる!!!!」


「な、凄いだろ?」


 私の髪は正面から見たら可愛い系肩までショートだったのだが後ろから見ると、鳥の飾り羽みたいに跳ねていた。


「ちょっと直してくる~~~~(泣)」



 私はパウダールームに駆け込んだ。



***



「はぁ、今日も不幸だったよ……」


 私は夕暮れの通学路をトボトボと歩く。


『小さい不幸だけどニャ♪』


 化け猫が、今日も嬉しそうに笑う。


「もう止めて~、小さくても不幸は不幸なんだから~~」


『止めニャイニャ』


「うう……」



「誰かー、助けてーーーー!!」



 私と化け猫が振り返る、そこにはバックを引ったくられたお婆ちゃん、引ったくり犯人はスクーターに乗ってこっちに向かって来る。



「許さん!!!!」


『馬鹿!! ニャニャ子!!』


 私はお婆ちゃんが倒れてるのを見て怒りが沸き上がっていた。


 私は走り来るスクーターの引ったくり犯人を正面に構え、それを止めようとしていたのだ。


『チッ、しょうがないニャ!!』


『化け猫キィィィィック!!!!』


 私の肩をび、化け猫がスクーター引ったくり犯人のフルフェイスヘルメットをフルキックした!!!!


 化け猫は七十七歳まで、私を死なせるつもりは無いのだ。



***



「ありがとうね、お嬢ちゃん」


 お婆ちゃんが私にお礼を言ってくれた。


「当然です!!」


 私は引ったくり犯人を倒したのは化け猫だが信じてもらえないので自分が蹴って倒した事にした。


『今日の第六不幸!!!!!!』


「勇敢なのはわかるし、引ったくり犯人を捕まえたのは立派だが、危ないからもうしちゃダメだよ!」


 私が通報して、来てくれた警察官に私は注意された。



 頑張ったのに………。



***



「はぁ、今日も無事、おうちに帰れたよ……」

 

 私は玄関に座り靴をぬぐ。


『良かったニャ♪』


 化け猫はそそくさと台所の方に歩いて行く。


「良くは無いけどね!!」


『今日の第七不幸!!!!!!!』



 化け猫から今日最後の呪い。



「何よ、化け猫!」


『スマートフォンをチェックするニャ』



 ………………………………………………。



 私はネットで小説を書いていた。


 そのネット小説サイトはこの時期キャンペーンをやっている。


 お題にそくした小説を即興で書くものだ。


 私は思う。


 このお題難しくね?

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化け猫と小さな不幸の七子ちゃん。 山岡咲美 @sakumi

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